ただし、いずれにせよ、Qualcommは、Samsungのプロセス技術を採用した次世代SoCの製造を計画するなど、回復の兆しを見せているとJana Partnersのレターには記載されている。同チップの「Galaxy S7」への採用にも期待を寄せているという。同社の成り行きを、もう少し見守ってみるべきではないだろうか。
JANA Partnersが同社の方針を貫くのであれば、Qaulcommは、徹底したコスト管理の下、利益が期待できるライセンス事業と半導体設計を2本柱として事業展開していくことになるだろう。確かに、「Qualcommの役員会は高年齢化している。彼らは、スマートフォンの全盛期にコストの増加を容認してきたが、スマートフォン市場の成長は鈍化しつつある」というJANA Partnersの指摘は的を射ている。
とはいえ、エンジニアの熱心な開発努力によって苦境を乗り越えてきたQualcommのやり方に、資金力に物を言わせた投資家が割って入る様子を見ているのは、しゃくに障るものだ。
JANA Partnersは、リストラ計画の実施によってQualcommのモバイル向けチップ事業で20〜22%の利益率を確保したい考えだ。その判断は合理的だとは思う。確かに、携帯電話技術の開発には多大なコストがかかる。しかし、Qualcommは、取得した特許のパネルを掲示するための壁「Patent Wall」を埋め尽くすほどの特許を取得し、現在もなおライセンス事業を強化し続けている。JANA Partnersは、こうした事実を見落としてはいないだろうか。さらにJana Partnersは、いずれ実用化される5G向けの開発についても考慮していない。
著者は、Jana PartnersがQualcommの経営幹部と何カ月も議論を重ねているのは知っている。だがJana Partnersは、「Patent Wall」の影に存在するエンジニアたちと話し合ったことがあるのだろうか。
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