約4700人を解雇すると発表したQualcomm。この決断に至るには、Qualcommの大株主であるJana Partnersからの要請があったのではないかと推察される。だが、この大株主からの要請は、Qualcommの技術開発力を考慮していない、無情なものではないだろうか。
資本主義とは、金銭をめぐる奇妙な勢力争いだ。強い者が主導権を握り、弱い者は失脚する。
米国の投資会社であるJANA Partnersは、“物言う投資家”と呼ばれる。“勢力争いにおける手ごわいライバル”と呼ばれることもある。同社のQualcommへの投資額は20億米ドルに上り、強い発言権を持つ。
Qualcommは2015年7月23日(米国時間)、リストラ計画を発表した*)。JANA Partnersが書いたレターが、同社の経営陣の判断に影響を及ぼしたとされている。JANA Partnersの要請によって、4700人の社員に解雇通知が送られることになった。解雇対象者の多くは、Qualcommのモバイル向けSoCの開発を手掛けたエンジニアだという。
*)関連記事:業績低迷にあえぐQualcomm、4700人を解雇へ
この措置は無情に思える。実際に、さまざまな点でそう言えるだろう。だが、米国の金融情報WebサイトであるTheStreet.comは、Qualcommのリストラ策をビジネスの観点から冷静に考察している。
同記事は、Qualcommがスマートフォン向けアプリケーションプロセッサ「Snapdragon」の最新版で、期待通りのシェアを獲得できなかったことを指摘している。TheStreet.comは、「Qualcommは、64ビットアーキテクチャと最先端の14nmプロセス技術への移行になかなか踏み切れずにいた。その結果、市場シェアを失い、収益が減少した」と分析している。
TheStreet.comの記事は、「こうした判断の遅れが、Samsung Electronicsの『Galaxy S6』でデザインウィンを失うという結果を招いた」と暗に意味している。だが、筆者はそうは思わない。Samsungは、14nmプロセスを適用した初めての「Exynos」を、プライドの問題からどうしてもGalaxy S6に搭載したかったのではないだろうか。64ビットに関しては、スマートフォン向けソフトウェアにはまだ必要だったわけでもないのにAppleが“見切り発車”したことは、JANA Partnersだけでなく誰もが知る事実だ。
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