富士通研究所とソシオネクストは、サーバ間の光通信向けに、56Gビット/秒の通信速度を実現する送受信回路を発表した。ソシオネクストは今回、オプティカルネットワーク分野で培ってきたノウハウを活用することで、消費電力を削減できる新しいタイミング誤差検出方式を開発。これにより、現行と同じ消費電力で2倍高速となる56Gbps送受信回路を実現している。
「2020年、IoTの普及で全てのデバイス/センサーはデータセンターやクラウドにつながる時代を迎える。つながるデバイスの数は500億台。2015年の150億台から3倍以上に増える見込みだ」――インテルは、2015年6月に行ったカンファレンスでこう語った。
IoTの普及に伴って懸念されるのは、膨大な量のデータ処理である。膨大な量のIoTデータをリアルタイムで処理するためには、データセンターの処理能力向上が解決の要因の1つとして挙げられる。しかし、同時に考えなければいけないのが“消費電力”だ。
データセンターは、享受できる電力量が設備の規模によって制限があるため、性能の向上とともに消費電力も増加させてしまうと成り立たなくなってしまう可能性がある。つまり、消費電力を増やさずに通信速度を向上させることが求められている。
富士通研究所とソシオネクストは2016年2月、サーバやスイッチで使用する半導体チップと光モジュール間のデータ通信において、従来と同じ消費電力で2倍高速となる、チャンネル当たり56Gビット/秒の通信速度を実現する送受信回路を開発した。
現行の送受信回路は、帯域劣化した信号を復元するDFE(Decision Feedback Equalizer)と、入力信号のタイミング誤差を検出するCDR(Clock and Data Recovery)の占める消費電力が全体の約3分の2となっている。
富士通研究所とソシオネクストは今回、CDRの消費電力を削減できる新しいタイミング誤差検出方式を開発。これにより、CDRの入力信号のタイミング判定回路を削減できるという。データをサンプリングするためのクロック線などの配線も不要になり、消費電力を低減した。
ソシオネクストのネットワークSoC事業部IP開発部で部長を務める仲直明氏は、「タイミング誤差検出方式に加えて、今回は送信側にもさまざまな工夫を行ったことで、消費電力を低減した。当社は、イメージング/オプティカルネットワークに注力している。光モジュールは熱に非常に敏感なため、装置として電力が満足していても光モジュールの近くで発熱する機器があると嫌がられる。当社はオプティカルネットワークで低消費電力にこだわってきたノウハウを活用したことで、今回実現できた」と語る。
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