同社は、CXD5602にパワーマネジメントIC(PMIC)と無線通信用LSIを組み合わせたシステムでの展開も始めている。PMICにマイクとアンプを内蔵、CXD5602はオーディオを内蔵しているため、ソニーが強みを持つ音声の入出力が可能だ。
無線通信用LSIとしては、LTEモデムチップベンダーAltair Semiconductor(アルティア セミコンダクター)を2016年1月に約250億円で買収したため、ソニーとしてLTEモデムLSIを提供可能*)。また、Wi-FiやBluetoothなどの無線通信との接続についてもサポートできる体制がある。
*)関連記事:ソニーがイスラエルのLTEモデムベンダー買収
ウェアラブル端末は、スマートフォンとセットで活用するイメージが強い。LTEチップを活用することで、端末単体でのインターネット接続が可能になる。これにより、「ウェアラブル端末の新しい用途が生まれてくるだろう」(仲野氏)としている。
例えば、CXD5602はイメージセンサーから得られたデータも処理できるため、設定した領域外に子どもが何らかの理由で出てしまったとき、検出した場所の音声や画像を記録して両親に送るなど、防犯用途としてのアプリケーションを想定できる。
ランニングやウオーキング時に、スマートフォンを持たずに通話することも可能だ。
CXD5602は今後、ウェアラブル端末のさまざまなユースケースに応じたSDK(ソフトウェア開発キット)を提供予定。システム全体での低消費電力化も進めていくとした。
同社が目指すのは、ウェアラブル端末による“脱スマホ”ではなく、「CXD5602が新しい製品が登場する1つのトリガーとなり、市場をブレイクスルーさせること」(仲野氏)とする。そのための鍵となるのは、“音声の認識”になるのではないかと指摘する。
「スマートフォンは、ユーザーインタフェースとして非常に分かりやすい画面がある。そのため、ウェアラブル端末がスマートフォンと同じように市場拡大するのは難しいと考える。しかし、“音声の認識”が高精度にできるようになれば、画面がなくてもできることが増えてくる。例えば、駅に向かうとき多くの人々は、スマートフォンで時間を調べている。“音声の認識”が当たり前になるのにハードルは高いが、ウェアラブル端末に語りかけるだけでそれらが代用できれば、1つのブレイクスルーとなるだろう」(仲野氏)
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