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自前主義で“モノづくりの自由度”を失った日本イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜(3)(2/2 ページ)

» 2016年06月27日 11時30分 公開
[石井正純(AZCA)EE Times Japan]
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自前主義でやってきた日本

 ではひるがえって、日本はどうだろうか。

 日本では、「オープン・イノベーション」といいながらも、それは“掛け声”だけで、実質的には自前主義を貫いてきた。

 1980年代。日本の半導体業界は、それはそれは強かった。ランキングを見ても分かるだろう。

左=1980年代の世界半導体売上高ランキング 出典:日本半導体歴史館/右=半導体売上高の地域別シェアと半導体業界誌の休廃刊(Gartner、IHSなどのデータを基に筆者が作成) (クリックで拡大)

 これが、2015年の売上高ランキングになると、上位10社中、日本企業は東芝の1社しか入っていない。25社まで範囲を広げても4社である(関連記事:2015年半導体メーカー売上高ランキング)。これに比べて、米国は25社のうち14社もランクインしている。

2015年半導体メーカー売上高ランキング
15年
順位
14年
順位
社名   15年売上高
[億米ドル]
前年比 シェア
1 1 Intel 米国 514.2 2.9% 14.8%
2 2 Samsung Electronics 韓国 401.6 8.3% 11.6%
3 4 SK Hynix 韓国 165 2.4% 4.8%
4 3 Qualcomm 米国 165 ▼14.5% 4.8%
5 5 Micron Technology 米国 140.8 ▼12.6% 4.1%
6 6 Texas Instruments 米国 122.6 0.1% 3.5%
7 15 NXP Semiconductors オランダ 97.2 77.3% 2.8%
8 7 東芝 日本 88.3 ▼13.7% 2.5%
9 8 Broadcom 米国 84.1 0.2% 2.4%
10 9 STMicroelectronics スイス 69 ▼6.8% 2.0%
出典:IHS

 なぜ、ここまで衰退してしまったのか。

 これは、過度な垂直統合、自前主義が災いしたと筆者は考えている。そこには、「オープン・イノベーション」の考え方はどこにもみられない。研究開発から製造まで全て自社で抱え込んでしまうという、絵に描いたようなクローズド・イノベーションのビジネスモデルをとってきたのだ。エコシステムレベルでのビジネスモデルがすっぽりと抜け落ち、技術が広がっていくことがなかった。例えば「Linux」や「iOS」など、オープンソースにしてエコシステムを構築し、それを広げていくという考え方が欠如していたのである。

 注目したいのは、設計と製造を切り離さずに統廃合をしてきたことだ。だが、設計と製造ではビジネスモデルがだいぶ異なる。一方で世界の半導体業界では、ファウンドリーが生まれ、半導体メーカーのファブレス化が進んでいった。米国では、日本が強さを誇っていた1980年代から既にファブレス化に向けた顕著な動きがあった。

左=設計と製造を切り離さずに統廃合してきた日本の半導体メーカー/右=米国では1980年代からファブレス化の動きがあった(クリックで拡大) 出典:AZCA

 日本は、「モノづくり」にこだわり過ぎて、設計と製造を切り離したビジネスモデルの発想がなかった。ファウンドリーが登場し、ファブレス半導体メーカーが増える中、日本の半導体メーカーは、逆に“モノづくりの自由度”を失っていったのである。

次回につづく

「イノベーションは日本を救えるか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜」連載バックナンバー


Profile

石井正純(いしい まさずみ)

ハイテク分野での新規事業育成を目標とした、コンサルティング会社AZCA, Inc.(米国カリフォルニア州メンローパーク)社長。

米国ベンチャー企業の日本市場参入、日本企業の米国市場参入および米国ハイテクベンチャーとの戦略的提携による新規事業開拓など、東西両国の事業展開の掛け橋として活躍。

AZCA, Inc.を主宰する一方、ベンチャーキャピタリストとしても活動。現在はAZCA Venture PartnersのManaging Directorとして医療機器・ヘルスケア分野に特化したベンチャー投資を行っている。2005年より静岡大学大学院客員教授、2012年より早稲田大学大学院ビジネススクール客員教授。2006年よりXerox PARCのSenior Executive Advisorを兼任。北加日本商工会議所、Japan Society of Northern Californiaの理事。文部科学省大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)推進委員会などのメンバーであり、NEDOの研究開発型ベンチャー支援事業(STS)にも認定VCなどとして参画している。

新聞、雑誌での論文発表および日米各種会議、大学などでの講演多数。共著に「マッキンゼー成熟期の差別化戦略」「Venture Capital Best Practices」「感性を活かす」など。


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