半導体業界におけるM&Aの嵐は収まる気配がない。2016年も、2015年ほどの数ではないものの、大規模な買収が相次いでいる。では、現時点で買収のターゲットとなりそうな“残っている企業”はどこなのだろうか。
2016年の世界半導体業界は、これまでの9カ月近くで既に、2015年に続く超大型合併買収の波に襲われた年となっている。2015年と異なっているのは、2016年の方が買収契約の数が少ないにもかかわらず、買収金額がかなり高額の案件があるという点だ。例えばソフトバンクは、ARMを3兆円超の現金で買収すると発表している。
このように買収金額が上昇していることを受け、湧き上がってくる疑問は、「現在買収ターゲットとして残っている企業は?」「“掘り出し物”といえる企業は?」などではないだろうか。
半導体メーカーが引き続き買収に意欲的である要因としては、半導体業界の成長が全体的に減速していることの他、コストの上昇、ベンチャーキャピタルによる投資の減少、利益率の低さなどが挙げられる。
しかし、米国の市場調査会社であるIC Insightsでマーケットリサーチ担当シニアアナリストを務めるRob Lineback氏は、EE Timesのインタビューに対し、「2016年の半導体市場では、“残存効果”が起こっている。メーカー各社は現在も、2015年に発表された合併買収に反応しながら、有利な地位を得ようと画策している」と述べる。「つまり、M&Aの波によって、さらなる波が引き起こされているのだ。買収がうまくいかなかった(あるいは買収合戦に乗り遅れた)企業が次のターゲットとなっている。こうした状況が落ち着くまでには、この先1年を要するだろう」
英国のプロフェッショナルサービスファームPricewaterhouseCoopers(PwC)のコンサルタントであり、US Semiconductor Advisoryの責任者を務めるRakesh Mehrotra氏と、同じくコンサルタントでUS Technology Deals Leaderを務めるRob Fisher氏は2016年8月、EE Timesの取材に対し、「合併買収の余地はまだ十分にある。過去18カ月間と比べると、ペースはやや遅くなるものの、合併買収の波は今後も続くだろう」と述べている。
16Q1順位 | 15Q1順位 | 社名 | 15年Q1売上高 | 16年Q1売上高 | 前年同期比の成長率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | Intel | 12,067 | 13,115 | 9% |
2 | 2 | Samsung Electronics | 9,336 | 9,340 | 0% |
3 | 3 | TSMC | 6,995 | 6,122 | ▲12% |
4 | 7 | Broadcom | 3,679 | 3,550 | ▲4% |
5 | 4 | Qualcomm | 4,434 | 3,337 | ▲25% |
6 | 5 | SK Hynix | 4,380 | 3,063 | ▲30% |
7 | 6 | Micron Technology | 4,061 | 2,930 | ▲28% |
8 | 8 | Texas Instruments | 2,940 | 2,840 | ▲5% |
9 | 10 | 東芝 | 2,619 | 2,446 | ▲7% |
10 | 9 | NXP Semiconductors | 2,636 | 2,224 | ▲16% |
11 | 12 | Infineon Technologies | 1,666 | 1,776 | 7% |
12 | 13 | MediaTek | 1,506 | 1,691 | 12% |
13 | 11 | STMicroelectronics | 1,700 | 1,601 | ▲6% |
14 | 14 | ルネサス エレクトロニクス | 1,470 | 1,415 | ▲4% |
15 | 17 | Apple | 1,260 | 1,390 | 10% |
16 | 15 | GLOBALFOUNDRIES | 1,436 | 1,360 | ▲5% |
17 | 20 | NVIDIA | 1,118 | 1,285 | 15% |
18 | 16 | ソニー | 1,272 | 1,125 | ▲12% |
19 | 18 | UMC | 1,140 | 1,034 | ▲9% |
20 | 21 | AMD | 1,030 | 832 | ▲19% |
上位20社合計 | 66,745 | 62,440 | ▲6% | ||
売上高の単位は百万米ドル。出典:IC Insights |
また両氏は、「今後は、よく似たレベルの中規模メーカーが、規模を拡大するために合併買収を行うとみられる。また、合併買収を試みたもののうまく実行できなかった企業が、より規模の大きい企業の買収ターゲットとなるだろう」と述べる。
EE Timesは、どの企業が次なる買収ターゲットになるのかを確認すべく、複数の業界アナリストや観測筋にインタビューを行った。どのメーカーが、なぜ必要とされるのか、その理由について説明していきたい。
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