次に、IoT領域に注目してみよう。米Silicon Labsは、幅広いIoT向けポートフォリオを持ちながらいまだに“独立”を保っている珍しい企業である。
IC InsightのLineback氏は、Silicon Labsが“格好の買収ターゲット”であり続けている理由について、「Silicon Labsが損失を計上したのは過去10年間でたった1四半期のみ(2011年第1四半期に200万米ドルの損失を計上した)である上に、IoT関連の強力なポートフォリオを備えている。同社のポートフォリオには、ZigBeeやThreadといった無線メッシュネットワーク向けの製品や、低消費電力の32ビットARMマイコンなどが含まれている」と述べる。
IoT分野において、Silicon Labsは卓越したM&A戦略を実施してきたことで知られている。同社は2012年にZigBeeチップベンダーのEmberを買収した後、2013年にエネルギー効率に優れたマイコンを展開するEnergy Micro、2015年には無線モジュールベンダーのBluegiga Technologiesを買収することで、IoTポートフォリオを拡大してきた。
だが、Silicon Labsの強さはハードウェアだけではない。同社は独自のソフトウェア開発ツールというさらに強力な武器を持っているのだ。
BroadcomのIoTチーム(2015年にCypressが買収)と同様に、Silicon LabsはソフトウェアRAIL(Radio Abstraction Interface Layer)のようなツールと、独自のアプリケーション向けに設計された無線ネットワーク用ソフトウェアスタック
「Connect」と呼ばれる無線ネットワーク向けソフトウェアスタックを、IoT製品の拡大の鍵となる技術として見ている。
だが、Silicon Labsは安くはない。
24億米ドルという時価総額(2016年8月時点)は、「既に大規模な資金を企業買収に投じたかもしれない潜在的な買い手にとっては高いハードルとなる」とLineback氏は分析した。
Marvell Technology Group(以下、Marvell)は、買収のターゲットとしてはあまり言及されない企業だが、一部の買い手にとっては興味深い存在になり得る。
Lineback氏は、「Marvellは財政的に苦境に陥っているものの、自動車向けプロセッサやSoC、クラウドコンピューティングシステム、IoT、マルチメディア向けアプリケーションなど幅広い事業を展開しているほか、FLC(Final-Level Cache)など、メモリ分野でのイノベーションを実現している。また、モジュールをブロックのように組み合わせてSoCを設計するプロジェクト『MoChi(Modular Chip)』を通じて、ICアーキテクチャの最適化にも取り組んできた」と記した。
Lineback氏の説明によると、Marvellの難点は「スマートフォン部門(アプリケーションプロセッサとコネクティビティソリューション)において業績の低迷が続いていること」だという。
アクティビストヘッジファンドのStarboard Valueは、2016年にMarvellの株式の6.7%を獲得したが、その後同年6月にMaximの元エグゼクティブであるMatthew Murphy氏をMarvellの新たなCEO兼プレジデントとして雇い入れた。Murphy氏は過去22年間にわたり、Maximのセールスおよびビジネス部門を率いてきた人物である。
Starboard ValueがMarvellの事業の一部をスピンオフしたり、事業全体を売りに出したりする可能性もある。だが次の動きは何も明らかにされていない。
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