スペースリンクが「nano tech 2017」に展示した単層カーボンナノチューブ(CNT)キャパシターは、エネルギー密度がニッケル水素電池や鉛蓄電池と同等(電極だけで比較)まで向上している。今後は、エネルギー密度を2〜3倍高め、リチウムイオン二次電池の置き換えができるような蓄電素子を目指して、開発を進める予定だ。
カーボンナノチューブ(CNT)の応用技術開発を手掛けるスペースリンクは、「nano tech 2017」(2017年2月15〜17日、東京ビッグサイト)の日本ゼオンブース内で、単層CNTキャパシターを展示した。このキャパシターの開発は、新エネルギー・産業技術総合研究所(NEDO)の委託プロジェクトとして進められてきたもので、2017年2月いっぱいで完了する。
nano tech 2017で展示した単層CNTキャパシターの静電容量は130〜140Fで、パワー密度は最大19kW/L(理論値)、エネルギー密度は最大55Wh/L(実験結果からの計算値)となっている(いずれも電極としての数値)。
スペースリンクの説明担当者は、「当社は13年前から単層CNTキャパシターの研究開発を行っているが、ようやく、エネルギー密度を、電極レベルでニッケル水素や鉛蓄電池と同等まで向上できた」と説明する。「今後の目標は、エネルギー密度を現在の2〜3倍高めて、リチウムイオン二次電池と同等レベルにすることだ。単層CNTキャパシターは発火や発熱の可能性が低く、リチウムイオン二次電池よりも安全な蓄電素子を実現できる」(担当者)
エネルギー密度を向上できたのは、材料であるCNTそのものによるところも大きいと、スペースリンクは述べる。展示した単層CNTキャパシターには、日本ゼオンの「ZEONANO SG101」が使われている。日本ゼオンは、2015年11月に、スーパーグロース法(SG法)を用いたCNTの量産工場(山口県周南市)を稼働した。SG法とは、通常のCNT合成方法に加えて、数ppmという微量の水分を添加する方法だ。これにより、10分の成長時間で高さ2.5mmの垂直配向単層CNTが生成できる。従来比で1000倍の成長/触媒効率を維持し、製造コストを大幅に削減できるという(関連記事:産学官連携で挑むCNT、ついに量産工場が稼働へ)
ただ、求められているエネルギー密度には程遠いと、スペースリンクは話す。「ドローンやクルマ向けでは、リチウムイオン電池の5〜10倍、具体的には1000〜4000Wh/Lのエネルギー密度を持つキャパシターへのニーズが高い」(同社)
この場合、単層CNTキャパシターは物理的に無理だ。そこで、「今検討しているのが、アルミニウムやマグネシウムなどの金属を用いた燃料電池と組み合わせることだ」とスペースリンクは続ける。「燃料電池は、エネルギー密度は高いがパワー密度は低い。一方で単層CNTキャパシターはパワー密度が高く、瞬間的に大電流を流すのは得意だ。この2つを組み合わせれば、リチウムイオン二次電池よりも、軽量でハイパワーな電池を実現できる」
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