富士経済が、2025年における次世代パワー半導体市場の予測を発表した。SiC、GaNはともに堅調に成長する。加えて有望視されているのが酸化ガリウム系パワー半導体だ。特に中高耐圧領域での優位性が際立ち、2025年には、市場規模でGaNパワー半導体を上回るとみられる。
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富士経済は2017年3月21日、次世代パワー半導体の市場予測を発表した。それによると、2025年、SiCパワー半導体の世界市場は1410億円と、2016年比で6.9倍、GaNパワー半導体は450億円と、2016年比で32.1倍に成長するという。
SiC-SBD(ショットキー・バリア・ダイオード)は、2016年に参入企業が増え、製品ラインアップが増加したことにより、同年の市場規模は170億円となった。富士経済は、今後も堅調に拡大していくと予想する。SiC-FETは市場が立ち上がったばかりだが、DC-DCコンバーターやインバーター、太陽光発電システムのパワーコンディショナーといった分野で採用が進み、2016年の市場は35億円となっている。
2016年の市場規模 | 2025年予測 | 2016年比 | ||
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SiCパワー半導体(全体) | 205億円 | 1410億円 | 6.9倍 | |
情報通信機器 | 68億円 | 287億円 | 4.2倍 | |
新エネルギー | 57億円 | 390億円 | 6.8倍 | |
自動車・電装 | 38億円 | 291億円 | 7.7倍 | |
出典:富士経済 |
SiCは2016年の時点では、サーバ用電源、UPS(無停電電源装置)、ストレージなどのPFC回路といった情報通信機器分野での需要が大きい。次が、太陽光発電システムのパワーコンディショナーなど新エネルギー分野での用途だ。今後、SiCの採用がとりわけ進むとみられているのが、自動車および電装分野である。急速充電スタンドやオンボードチャージャー(車載充電器)での需要が大きい。SiCを採用した駆動用インバーターは実証が進んでいて、2020年以降に、実車への搭載が活発になると富士経済は予測する。
さらに、富士経済は、6インチSiCウエハーの製造が本格的に始まっていることから生産効率が上がり、低価格化が進むとみている。これに加え、SiCパワー半導体の量産に向けた設備投資が2017〜2018年にかけて進むので、SiCパワー半導体向け製造装置の市場も拡大する見込みだ。
GaNパワー半導体市場は、SiCに比べると規模はまだ小さい。200Vなど低耐圧の領域を中心に市場が立ち上がったが、600Vクラスの中耐圧領域の製品化が本格化したことで、適用分野が拡大し、2016年の市場規模は14億円となった。富士経済によると、今後は、より高い耐圧を備えた製品ラインアップの開発や拡充が進み、市場の活性化が期待されるという。
2016年の市場規模 | 2025年予測 | 2016年比 | ||
---|---|---|---|---|
GaNパワー半導体(全体) | 14億円 | 450億円 | 32.1倍 | |
情報通信機器 | 10億円 | 100億円 | 10.0倍 | |
新エネルギー | 3億円 | 130億円 | 43.3倍 | |
民生機器 | 2億円 | 70億円 | 35.0倍 | |
出典:富士経済 |
用途分野別では、SiCと同様、情報通信機器と新エネルギーでの需要が大きい。民生機器ではオーディオのパワーアンプなどで需要を獲得している。今後はPC、TVなどのACアダプター、エアコンなど白物家電のモーター駆動用電源回路部、LED駆動回路、ワイヤレス給電などでの採用が期待されるという(関連記事:“オールGaN”のパワーICでアダプターが1/2に小型化)。
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