神戸大学の研究グループが、理論予測上の変換効率が最大63%に及ぶ新型の太陽電池セル構造を開発した。経産省が目標とする2030年の発電コスト7円/kWhを達成するには、太陽電池の変換効率を50%以上に引き上げる必要があるが、この太陽電池セル構造はその条件を十分に満たす。
神戸大学は2017年4月7日、同大学工学研究科電気電子工学専攻の喜多隆教授と朝日重雄特命助教らの研究グループが、理論予測上の変換効率が最大63%に及ぶ新型の太陽電池セル構造を開発したと発表した。この太陽電池セル構造は、これまで太陽電池セルを透過し損失となっていたエネルギーの吸収が可能で、発電コストの大幅な削減に道を開く可能性がある。
太陽電池の変換効率が50%を超えると、経産省が目標とする2030年の発電コスト7円/kWhは達成できる。だが、従来の単接合太陽電池は約30%が理論的な限界だ。現時点の変換効率の世界記録は4接合太陽電池によるものだが、それでも46%である。
これまでの太陽電池には、入射する太陽光エネルギーの大半が吸収されずに透過したり、光子の余剰エネルギーが熱になったりと、まだ十分にエネルギーを活用できていないところがある。こうした大きな損失を抑制することが、発電コストの削減には不可欠だ。
そこで研究グループは今回、異なるバンドギャップの半導体からなるヘテロ界面を利用した太陽電池を透過するエネルギーの小さな2つの光子を用い、光電流を生成する太陽電池セル構造を開発した。この太陽電池セル構造は、かつて損失となっていた波長の長い太陽光のスペクトル成分を吸収でき、変換効率最大63%という理論予測結果を示す。
今回の研究では、この太陽電池セル構造のユニークなメカニズムである2光子によるアップコンバージョン(エネルギー昇圧)の実験実証にも成功。実証された損失抑制効果は、従来の中間バンドを利用した方法に比べて100倍以上にも達した。研究グループは今後、最適な材料を利用した太陽電池セル構造の設計や変換効率にかかる性能評価を進めるとしている。
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