自動運転技術に膨大な投資をしているIntelが、「2050年には“Passenger Economy”という巨大市場が生まれている」と予測するレポートを発表した。レポートは、自動運転技術によって生み出される経済的、社会的価値は7兆米ドルに上ると予測している。
Intelは2017年6月1日(米国時間)、完全な自動運転車の未来が到来しているであろう2050年には、同社が“Passenger Economy”と呼ぶ7兆米ドル規模の巨大市場が出現していると予測するレポートを発表した。
Intelは今回、市場調査会社のStrategy Analyticsに概念の検証とレポートの執筆を依頼した。
社会的、経済的な影響を幅広く網羅するように作られたレポートは、どれも説明責任の問題に直面するものだ。ただ、このレポートを読んだ人のうち、一体何人が2050年に自分の目で結果を確かめられるのか、その1点が気にかかった。
7兆米ドルという途方もない数字(レポートによれば、これは日本とブラジルの2017年のGDP予測の合計を上回る額だという)は確かに目を引くものだが、一方で、このレポートに対して懐疑的になってしまう理由もまた、この数字にある。リサーチ費用を払ってくれた企業にとって都合のいい内容になっているのではないか、と思ってもしまっても仕方あるまい。
そのようにしてこのレポートをはねつけるのは簡単だ。だが、最後まで読み進めてみると、このレポートは、意図的にせよ無意識にせよ、筆者がこれまで目にしたことのあるどの市場予測レポートよりも効果的に「完全な自動運転車」について説明していることが分かった。
このレポートは、今後20年間の完全な自動走行車の売上高予測や、潜在的な購入者の候補、一世帯ごとの自動運転車普及率などについては触れていない。そのようなテーマは恐らく“意図的に”省いたのではないかと筆者は考えている。
このレポートでは主に、自動運転車とその関連技術が作り出す未来が取り上げられているが、その内容は乗り物や自動車ビジネスに関するものではない。レポートでは、自動運転車の影響を受ける輸送(トランスポーテーション)を超えた世界が描かれているのだ。
このレポートでは、自動運転技術に巨額の投資をしているIntelのような企業の意識を珍しく垣間見ることができる。自動運転車に対するニーズを解説することで、自動運転技術がもたらすチャンスを明らかに(もしくは正当化)している。
Intelのバイスプレジデントで、自動運転ソリューション部門のゼネラルマネジャーを務めるDoug Davis氏は、膨大なコストを掛けて予測を依頼した理由について、「将来の課題を予測するためには、まずは未来を知ることが重要だ」と答えている。同氏は「他の技術についてもそうだが、未来をよく理解しておけばおくほど、より高いポジションにつくことができると考えている」と続けた。
このレポートは、自動車メーカーに対して、自動車の販売数が減少しているこの時代に、単にクルマを製造しているだけでは生き残れない、と進言している。
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