メディア

IoT時代をリードする人材とはJASA発IoT通信(4)(2/4 ページ)

» 2017年09月28日 11時30分 公開

資本主義の発展プロセスを示す創造的破壊のモデル化

 シュンペーターによる創造的破壊の概念は資本主義経済の成長プロセスの本質として示されたものである。資本主義経済は常に新陳代謝を繰り返し発展していくものであり、これを繰り返す力の源は人々の欲望であるとした。その欲望に応える推進力として5項目を挙げている。さらに、シュンペーターは資本主義経済発展のプロセスを推進する上で銀行などに対する信用は必須のものであるとしている。そこで、シュンペーターが提唱した5項目に、信用という項目を追加した6項目で作成した資本主義経済の発展プロセスモデルを図2に示す。

図2:資本主義経済成長プロセスのモデル

 資本主義経済は経済構造の創造と破壊を繰り返す創造的破壊というプロセスによって成長する。このプロセスを推進する力として6つの項目がある。これら6項目をそろえていくことで、これまでなかった新しい経済構造を創造し推進していくことができる。その一方で、古くなった経済構造は淘汰(とうた)されていくことになる。

 新しい経済構造が創造された後は、発展期、最盛期、衰退期をたどり、新しい経済構造もいつしか古い経済構造となる。資本主義経済の中にある企業はこうした資本主義経済のプロセスの荒波を自ら生み出す、あるいは襲い掛かる荒波を乗り切る力が必要である。ここで、IoTに関連する技術開発あるいはビジネスに関わる人材に関する2つ目の要件を示すことができる。

IoT時代の人材に関わる要件 その2

 資本主義経済発展のプロセスを背景に、その推進力である6項目を自社内部からの成長戦略の中に反映していくことができる。

IoTと資本主義経済成長プロセスにおける生産

 創造的破壊という革命的な次元まで行かなくとも、新しい経済構造の中で企業経営に求められる改革や新システムの開発には、投資を拡大して発展期を加速し、最盛期に一番乗りして利益を上げ、深手を負わないように衰退期を乗り越えるまでの連続するプロセスをコントロールすることにある。

 シュンペーターはこの連続するプロセスにおいては生産が軸となることから、生産段階の本質は既存の物と力という要素の結合、あるいは既存の物と力と労働といった要素の結合であると言っている。しかし、新たな製品の生産は、これまでとは異なる要素の結合となる。従って、生産物を変更し、生産方法を変更するならばその変更具合によって、次の2つの場合が考えられる。

  • ①古い結合から新たな結合に連続的に変化する。
  • ②非連続的に新たな結合が登場する。

 このを新結合とよんでいる。これこそがイノベーションである。しかし、こうしたイノベーションは日常的に行われるようになるであろうとシュンペーターは言っている。創造的破壊と似ているが、新結合(イノベーション)を遂行する5項目を示している。

  1. 新しい品質の財貨の生産
  2. 新しい生産方式(商品の商業的取扱いに関する新しい方法を含む)
  3. 新しい販路の開拓
  4. 原料や半製品の新しい供給源の獲得
  5. 新しい組織の実現(独占的地位の確保か、相手の独占を打破するか)

 このように、シュンペーターが定義するイノベーションは生産というプロセスの切り口からきているものである。現在では、生産に限定することなく組織内部からの革新あるいは革命のプロセスとしてイノベーションという言葉を使うようになっている。IoTは新結合を加速する環境でもあり、これまで以上にイノベーションが同時多発的に発生していくことになる。ここで、IoTに関連する技術開発あるいはビジネスに関わる人材に関する3つ目の要件を示すことができる。

IoT時代の人材に関わる要件 その3

 IoT空間上に分布もしくは分布させたエッジ、各種アプリケーション、ビッグデータなどを相互に接続して、圧倒的な力を持った新しいシステム価値を創造するプロセスを提案できる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.