それでもHuaweiは、スマートフォンおよびネットワーク市場において大きなシェアを確保している。米国の市場調査会社IDCによると、2018年の世界スマートフォン市場は14億2000万米ドル規模で、Huaweiのシェアは14.6%、Appleは13.2%だったという。また、米国の市場調査会社IHS Marketによると、2017年の世界モバイルインフラ市場におけるHuaweiのシェアは28%、Ericssonが27%だという。
IHS Markitでモバイルデバイス/ネットワーク技術担当主席アナリストを務めるWayne Lam氏は、「Huaweiは、自社製スマートフォン向けとして相当量のQualcommのチップセットを使用している。特に、ミッドレンジおよびローエンドのチップセットが多いようだ」と述べている。
同氏は、「ただしHuaweiは、Samsung Electronicsのように、社内で独自の半導体設計を手掛けているメーカーだ。Huaweiの子会社であるHiSiliconのSoC(System on Chip)『Kirin』は以前から、Huaweiのハイエンドのフラグシップ端末に搭載されている。このような独自の開発能力によって、サプライチェーンに多様性が生まれるだけでなく、もし、QualcommのSoCをはじめとする米国製品市場から追放されることになったとしても、“予備プラン”として機能する可能性が秘められている」と述べる。
Huaweiにとって、米国の半導体メーカーであるBroadcomやIntel、Qualcommは、小中規模のサプライヤーとして位置付けられている。Goldman Sachsによると、Huaweiが2018年第3四半期に半導体購入に充てた524億人民元の内訳は、Broadcomに21億人民元、Qualcommに16億人民元、Intelに6億人民元だったという。また、Foxconn Industrial Internetは、同四半期におけるHuaweiへの製品およびサービス売上高が91億人民元、TSMCは38億人民元だった。
小規模な中国通信会社ZTEは2018年初頭に、米国製品の購入を禁じられ、数カ月間にわたって主要な製造業務を強制的に停止させられている。Financial Timesによると、あるサプライヤーは、ZTEへの出荷数量が、6000万個から1500万個に減少したという。
既存のサプライチェーンを見ると、「自社の事業を、たった一つの市場や顧客だけに集中し過ぎないようにすべきだ」という教訓を得ることができる。機器メーカーは、ほんの一握りの主要サプライヤーをひいきにすることで、彼らの“重要顧客”となり、その立場を利用して数量割引などを確保している。
両社間の関係が悪化したとしても、機器メーカーが損害を受けることはまずない。モバイルオーディオプロセッサを手掛けるAudienceは2012年に、Appleが「iPhone 5」においてAudience製チップの採用を中止すると発表した時、株式が一株当たり22米ドルから約8.5米ドルに下落した。Reuters(ロイター通信)によると、Audienceは2012年の新規株式公開(IPO)目論見書の中で、投資家たちに対し、同社が売上高全体の75%を、1社の大手OEMとその委託製造業者に依存しているとして、警告したという。Appleの発表は、AudienceがIPO目論見書を発表する直前に行われたことから、2012年におけるAudienceの公募価格は最低ランクとなった。
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