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RISC-V活用が浸透し始めた中国製品分解で探るアジアの新トレンド(40)(2/3 ページ)

» 2019年07月08日 11時30分 公開

プロセッサ+電源IC

 図2に、同モジュールの金属シールドを取り外した実装面の基板を示す。左側はRISC-Vコアを有するメインプロセッサで、中国KENDRYTEの「K210」である。基板上にはあと2つ機能チップ(受動素子を除く)が搭載されており、中国RYCHIP Semiconductorの電源IC(右)、中国GigaDevice Semiconductorのシリアルフラッシュメモリ(不揮発メモリ)だ。見て分かる通り、全て中国製チップという構成になっている。

図2:M1 AI Moduleの内部は、ほぼ中国チップである 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 KENDRYTEのK210(プロセッサ)とRYCHIP Semiconductorの電源ICは、SiPEEDのMAiXシリーズにもそのまま使われているので、組み合わせキットとして、提供されているものと思われる。

 現在、スマートフォンなどでは、1つのメーカーがプロセッサ、電源IC、トランシーバーをキット化して取りそろえるのが主流(Qualcomm、MediaTek、Samsung Electronics、HiSiliconなど)だが、通信やコンピューティングモジュールではまだプロセッサと電源ICが別メーカーの場合が多い。例えばIntelやNVIDIAは、Texas Instruments(TI)やMaxim Integrated、ローム、中国、台湾の電源ICメーカーのチップと組み合わせるケースも多い。

 KENDRYTEとRYCHIPは、SiPEEDのモジュールで実績を持ったことで、今後、この組み合わせのまま、採用を広げていく可能性は高いだろう。

FPGAも中国メーカーが台頭

 図3に、M1 AI Module以外のSiPEED製品の基板画像を示す。左はMAiXシリーズの基板だ。カメラやディスプレイを接続し、画像AIなどを行えるもの(カメラなどは付属されているのでユーザーが組み立てる)。図1のチップとほぼ同じものに加えて、USBをシリアルに変換するための、中国WCHのチップが使われている。このボードもほぼ中国チップだけで構成されている。図3右はRISC-V対応のFPGAボードである。ANLOGICという中国メーカーのFPGAが搭載されている。ディスプレイタッチコントローラーも中国NSIWAY製だ。他にも中国チップが3個搭載されており、中国チップ比率は、7分の5と高い。

図3:SiPEED製品の基板 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 FPGAと言えば、Intel(Altera)、Xilinx、Lattice Semiconductor、Microsemi(Microchip Company)など米国勢が圧倒的な強さを誇っているが、中国からもいくつか、こうした製品で採用されるFPGAが生まれている。採用される製造プロセスは若干古い(弊社では詳細な測長を行いプロセスの判定も完了している)が、“ミニFPGA”として使うにはまったく問題のないものである。

 冒頭で、中国発の世界的に使われるEspressifのようなモジュールがあることを取り上げた。今回分解したSiPEEDのモジュールは、ほぼ中国製チップで構成されていて、安価で高性能(エッジ処理としては十分なスペック)という点から、いずれ“第2のEspressif”になるのではないかと思われる。

 日本でもインターネット通販で多くのルートからSiPEEDの製品を入手可能だ。

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