Micron Technologyは、2000億米ドルを投じてメモリチップの生産を米国に戻すことを計画している。ただし、複数のアナリストが米国EE Timesに語ったところによると、この計画は課題に直面しているという。
世界第3位のメモリメーカーであるMicron Technology(以下、Micron)は2025年6月12日(米国時間)、以前の投資計画に300億米ドルを追加して、2000億米ドルを米国内で投資することを発表した。アイダホ州での第2メモリファブの建設と、バージニア州の施設の拡張、AIに不可欠な広帯域メモリ(HBM)向け先進パッケージング工場を米国に移転する計画だという。2000億米ドルのうち、500億米ドルは米国内の研究開発に投資することも発表し、ニューヨークにメガファブを建設する計画が進行中であることをあらためて表明した。
Micronは、DRAM製品のほぼ全てを海外で生産しているが、投資完了後にDRAMの40%を米国で生産することを目指しているという。ただし、具体的な時期については明らかにしていない。Micronは、TSMCやGlobalFoundriesに続き、2025年のドナルド・トランプ米大統領就任後、米国での数十億米ドル規模の投資額をさらに拡大している。
米国の市場調査会社であるInternational Business StrategiesのCEOを務めるHandel Jones氏によると、Micronは、メモリメーカー特有の一連の課題に直面すると予想されるという。
Jones氏はEE Timesに対し「Micronがニューヨーク州クレイの施設でコスト競争力のあるDRAMを製造するのは難しいだろう。同地域にはDRAM製造に関する半導体の専門知識がほとんどない。Micronが将来、競争力のあるDRAMコストを実現するには、ニューヨーク州クレイ以外の米国内、もしくは米国外の代替拠点が必要になるだろう」と語った。
MicronはHBM生産で先行するSK hynixに追い付こうと努力しているが、SK hynixもHBMの先進パッケージング工場の一部を米国に移転することを目指している。Jones氏は、「Samsung Electronicsがテキサス州テイラーに新しい半導体工場を建設中であることから、Micronはさらに厳しい競争に直面する可能性が高い」と述べている。
Jones氏は「Samsung Electronicsがテイラーでメモリデバイスを製造する可能性はますます高まっている。DRAM製品はコモディティであり、ギガバイト当たりの価格が多くの市場セグメントに参加するための重要な指標となる」と述べている。
技術調査会社であるTechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏はEE Timesに対し「Micron、GlobalFoundries、TSMCの最近の発表は、ある程度は、CHIPS and Science Act(CHIPS法)の補助金と、国家安全保障上の理由から半導体事業における米国のシェア拡大を促す政府の圧力の結果だ」と語った。「ただし、企業にとって最優先事項は依然として収益性だ」と同氏は指摘している。
同氏は、台湾に関して戦略的曖昧さを保持する米国の政策に言及し、「これらの企業は、真の投資収益率(ROI)をもたらす合理的な事業判断を下さなければならない。2025年の投資パターンは、その筋書きに沿って動いている。関税や『1つの中国(One China)』政策のような地政学的な問題をめぐる不確実性は、ROIの大きな懸念事項になっている」と付け加えた。
Micronは、DRAMチップの約60%を台湾で製造している。台湾は、米中間の地政学的な争いの中心にある世界最大の半導体供給国である。
MicronのCEOを務めるSanjay Mehrotra氏は「米国の投資は、米国の技術的リーダーシップの強化と、半導体エコシステム全体における数万人の雇用の創出、経済および国家安全保障に不可欠な半導体の国内供給の確保につながる」と述べている。
Mehrotra氏は用意した声明の中で「トランプ大統領、Howard Lutnick商務長官、国内の半導体製造の発展に尽力してきた連邦、州、地方のパートナーの支援に感謝する」とコメントした。
Micronは「今回の米国での投資は、国内の半導体産業の振興を目的とした連邦税制優遇措置である『先端製造投資税額控除(Advanced Manufacturing Investment Credit)』の対象となる見通しである。アイダホ州とニューヨーク州にそれぞれ2つの工場を建設し、バージニア州の工場を拡張、近代化するために、地方、州、連邦レベルで資金を確保しており、その中にはCHIPS法による最大64億米ドルの資金も含まれる」と述べている。
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