2025年第1四半期(1〜3月)の世界半導体ファウンドリー市場は、例年と比べると低迷の度合いがやや緩やかだった。貿易政策の期限や景気刺激策などが予期せぬ追い風となり、季節要因による落ち込みが和らいだからだと考えられる。
2025年第1四半期(1〜3月)の世界半導体ファウンドリー市場は、例年と比べると低迷の度合いがやや緩やかだった。これは、貿易政策の期限や景気刺激策などが予期せぬ追い風となり、季節要因による落ち込みが和らいだからだと考えられる。
台湾の市場調査会社TrendForceによると、2025年第1四半期における世界ファウンドリー売上高は、前四半期比5.4%減となる364億米ドルだった。このように落ち込みが明らかに緩和された背景には、米国の相互関税停止期限に先立って顧客が発注を前倒ししたことや、中国の2024年の消費者補助金プログラムのプラス効果が続いたことなどがある。こうした要因によって、2025年第1四半期の設備稼働率が通常と比べて高い状態に維持された。
TrendForceの分析結果は、市場が地政学的政策や各国の経済政策に直接反応していることを示している。米国の関税変更が間近に迫ったために緊急調達が殺到し、顧客がコスト上昇前に供給を確保しようとしたことから、ファウンドリーが利益を享受したのだ。
2025年初頭に発表された当初の予測では、2025年にファウンドリー売上高は20%増加する見込みだった。しかし、この時はまだトランプ政権が関税政策を全面的に発表する前だった。
同時に、中国の消費者市場刺激策によって、さまざまな電子部品の需要が持続し、特に中国市場でのプレゼンスが高いファウンドリーにとっては追い風となった。
これらの要因による影響は、企業によって異なる。市場シェア67.6%の圧倒的リーダーであるTSMCの売上高は、前四半期比5%減にとどまる255億米ドルだった。スマートフォンの季節的な落ち込みが出荷に影響を及ぼしたが、AI/高性能コンピューティング(HPC)の堅牢な需要や、関税関連でテレビ受注が急増したことなどによって下落幅が相殺された結果だ。
これとは対照的に、市場シェア7.7%で世界2位のSamsung Foundryは、売上高が前四半期比11.3%減の28億9000万米ドルと、大きく下落した。TrendForceは下落の要因として、中国の消費者補助金プログラムから得られるメリットが限定的だったことや、先進技術ノードに対する米国の輸出規制による影響が続いていることなどが指摘されている。
政策主導による予備在庫の確保は、特に中国ファウンドリーや中国でのプレゼンスが高い企業などに利益をもたらした。SMICは、主に米国関税や中国の補助金によって初期の在庫確保が増加したことが要因となって、売上高が1.8%増の22億5000万米ドルに達し、世界で3位の座を獲得した。これがASP平均販売価格(ASP)の下落幅の緩和につながった。
同様に、Vanguard International Semiconductor(VIS)とNexchipも売上高が増加し、それぞれ前四半期比1.7%増の3億6300万米ドル、同2.6%増の3億5300万米ドルだった。関税や補助金による急ぎの受注や、予備在庫の確保などが設備稼働率を押し上げる要因となった。また、PSMCもこのようなダイナミクスに関連した注文が殺到したことによって設備稼働率が安定し、前四半期比での下落幅はわずか1.8%にとどまった。
それとは逆に、中国市場やその補助金への関与が薄いファウンドリーは、季節的要因による圧力を強く感じる結果となった。GlobalFoundries(GF)は、主要な顧客基盤を中国以外に置いていて、補助金プログラムによるメリットを享受できなかった。売上高は季節的な落ち込みもあって前四半期比13.9%減となる15億8000万米ドルだった。また、Tower Semiconductorも季節的な落ち込みによる影響を顕著に受けたことと、中国の補助金による後押しを受けられなかったことから、売上高は大幅に減少し、同7.4%減となる3億5800万米ドルだった。
TrendForceによると、2025年第2四半期以降は市場のけん引要素が変化していく見込みだという。米国の関税政策による急激な調達増加は長くは続かないとみられるが、中国の補助金の勢いや、新型スマートフォンの発表に向けた在庫積み増しが見込まれること、AI/HPCの安定した需要などが設備稼働率を後押しして、トップ10のファウンドリーの売上高が回復していく可能性がある。
継続的な政策効果や既存の製品サイクルによる需要が、2025年の市場の軌道に影響を及ぼすとみられる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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