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東工大、電子輸送型有機半導体高分子を合成直接アリール化重縮合法を採用

東京工業大学は、直接アリール化重縮合法を用いて、電子輸送型(n型)の有機半導体高分子の合成に成功した。作製した高分子トランジスタは、室温大気環境で長期保存しても性能が安定しているという。

» 2019年08月13日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

室温大気環境で1カ月保存後も性能を維持

 東京工業大学物質理工学院材料系の王洋博士研究員(現在は理化学研究所)と道信剛志准教授らは2019年8月、直接アリール化重縮合法を用いて、電子輸送型(n型)の有機半導体高分子の合成に成功したと発表した。この材料で作製した高分子トランジスタは、水との副反応が起こりにくく、室温大気環境で1カ月保存しても、十分な電子移動度が保持されていることを確認した。

 従来の一般的なn型有機半導体高分子は、ドナー性モノマーとアクセプター性モノマーが交互に連結する設計となっている。これらの高分子は、最低空軌道(LUMO)準位深さが十分ではなく、作製した有機トランジスターを動作させると、大気中の水分と反応し、性能が劣化するという課題があった。

 研究チームは今回、電子アクセプター性骨格だけからなるn型有機半導体高分子を新たに設計した。基本骨格として、ナフタレンジイミドとチエノピロールジオンを選択。πスペーサーには電子吸引性のチアゾールを採用。合成は環境負荷の小さい直接アリール化重縮合法を用いた。重合条件を最適化することで、チアゾールの向きが異なる2種類(P1とP2)の高分子を合成した。

 合成した2種類の高分子は、チアゾールの向き以外はほぼ同じ構造の異性体だが、吸収スペクトルや結晶性が大きく異なることが分かった。例えば、P1とP2の薄膜で異なる吸収スペクトルを観測した。X線回析もP1では1次回析のみ観測したが、P2では5次回析まで観測するなど、高い結晶性を示した。また、LUMO準位が−4.0eV以下と極めて深いことも分かった。

上図は既存材料と開発材料の電子輸送型高分子の比較、左下図はP1とP2の吸収スペクトル、右下図はP1とP2の薄膜X線回析像 出典:東京工業大学

 研究チームは、P1とP2高分子で薄膜トランジスタを作製し、電子移動度を評価した。この結果、結晶性の高いP2の電子移動度は、薄膜トランジスタの作製直後に2.18cm2V-1s-1となった。これを1カ月間、室温大気環境で保管した後に電子移動度を評価したところ、1.0cm2V-1s-1となり、大きな劣化は見られなかったという。60Vの電圧を1000秒間印加した後も、電圧−電流特性に変化は見られず、高い安定性を実現した。

左図は室温大気環境で保管されたP2トランジスタにおける電子移動度の時間依存性、右図は実際のトランジスタにおける伝達特性の変化 出典:東京工業大学

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