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» 2019年10月02日 11時30分 公開

技術の集大成で東京五輪に挑むパナのRAMSARAMSAの「試聴室」も公開(2/2 ページ)

[永山準,EE Times Japan]
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「技術の集大成」新たなツールで、高精度の事前シミュレーションを実現

 これらの技術を最大限に用いる形で、同社が2019年3月に新たにリリースしたのが、音響空間制御シミュレーションツール「PASD」だ。PASDは、ラインアレイスピーカーの構成を検討する「PaLAC(Panasonic Line Array Calculator)」とクラスタ配置を検討する「AcSim(Acoustic Simulator) II」の2つのソフトウェアによって事前設計を行う。その上で、音響測定や調整を行うソフトウェア「AutoFIR(Automatic FIR filter adjuster)」によって、現場での細かな調整を行う。現実に近い高精度の事前シミュレーションが可能であり、従来は多くの時間を割いていた現場での調整作業を短縮できるという。

左=PASDの構成/右=PASDを利用するシステム構成(クリックで拡大)

 具体的には、PaLACでは、会場の空間データを2Dで入力し、ラインアレイスピーカーの個数や配置、1つ1つの最適な角度など施工仕様を検討。音響解析を行うとともにフィルター係数を演算し、FIRフィルター内蔵のDSPアンプにデータを送る。AcSimでは、3Dの空間データを入力し、そこにエリアとスピーカーの位置情報を入れることで、音圧レベル分布を解析。会場内で伝わる音の差がなくなるようシミュレーションする。そして、現場でAutoFIRを用い、実際の音の響きをマイクで測定、音響測定および音響調整を行うという流れだ。松本氏は、「画期的なのは、周波数特性を事前に演算し、補正のためのフィルター係数をあらかじめ出せることだ。目標特性を決めれば、それぞれのスピーカーにどんなフィルターが必要かを自動で算出し、アンプにデータを送ることができる。また、現場で実際に測定した際、シミュレーションと差がある箇所があればその部分だけ補正する演算もすぐに可能で、これまで半日かかっていたような現場での調整作業が1〜2時間でできるような効果が得られる」と話した。

左=PaLACを用いた事前検討例/右=AcSIM IIを用いたシミュレーション例。各種CADソフトと互換しているため、CADデータがあればすぐに解析を進められる(クリックで拡大)

 こうした技術を実現した『肝の部分』として松本氏が説明したのが、「インパルス応答による高密度スピーカーモデリングデータの利用」だ。インパルス応答を測定することで、周波数に対する振幅と位相の両方の情報を一度に評価できるといい、同社は独自の無音響測定システムによって、スピーカーのインパルス応答データを高密度で取得。シミュレーションのための基礎データをして活用。これによって、「ほぼ現実に近いシミュレーションを実現した」という。このインパルス応答のデータ取得については「競合の2倍くらいの密度で取得している」(松本氏)という。

PASDによって、事前シミュレーションを精度を高めることで、音響調整の負担が軽減される(クリックで拡大)

 PASDは、ラグビーワールドカップの会場でもある熊本市の「えがお健康スタジアム」でのRAMSAラインアレイスピーカー設置の際にも活用され、低音の反響を抑えると同時に近隣住宅地への音漏れを防ぐ制御を行っている。同社は、PASD利用に関するセミナーを実施し、受講者に対して無償提供することで、ユーザー層をさらに拡大していく取り組みも進めているという。

開発を支えてきた視聴室

 同社は今回、福岡事業場内にある「試聴室」を公開した。この視聴室は2015年10月にオープンしたもので、床面積63.6m2。D-70の遮音性能を誇り、残響時間は全帯域で約0.25秒。内部のプロジェクターや空調などの音も抑えており、静けさを表す指標の「NC値」は15未満で、「コンサートホールの舞台でピンを落とした音が最後列席でも聞こえるくらいの静かさ」だ。松本氏は、「大きな音の中に隠れたディテールの部分、大きな音が鳴った後の余韻の切れ際などもしっかり評価できる」と話した。

視聴室内部。中央にはラインアレイスピーカーが置かれている(クリックで拡大)

 また、音を拡散させるため、視聴室の壁には拡散体を配置してあるほか、壁や天井も並行ではなく、スピーカーを置いてある部屋の奥側から広がる形になっている。これも、壁や天井が平行だと音が集中する部分が出てしまうからだという。

 同社では、この視聴室においてラインアレイスピーカーなど各種機器の開発時の音質チェックやPASDによる調整結果について、「最終的な感覚による音の良しあしの評価」を行ってきたという。松本氏は、「単純に計測、測定して結果があってればいいというようなテクニカルな内容だけでなく、われわれは最終的な出音にこだわっている。この試聴環境を使ってしっかりと音を確認して、1つ1つきれいに丁寧に設計していくというのが1番のポイントと思っている」と語っていた。

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