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TIのGaNパワー半導体ビジネスの狙いと勝算ゲートドライバとの組み合わせで(1/2 ページ)

Texas Instruments(TI)はパワー半導体市場でどのような戦略を立て、競合に対抗していくのか。同社ハイボルテージ・パワー部門バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャを務めるSteve Lambouses氏にインタビューした。

» 2019年12月06日 11時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 Texas Instruments(以下、TI)は5年ほど前から、GaN(窒化ガリウム)を用いたパワー半導体製品を展開し、順次、製品ラインアップを拡大している。TIは、耐圧600Vクラスのパワー半導体で現在の主流であるIGBTを手掛けておらず、パワー半導体市場では新規参入組になる。TIはパワー半導体市場でどのような戦略を立て、競合に対抗していくのか。同社ハイボルテージ・パワー部門バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャを務めるSteve Lambouses氏にインタビューした。


自社工場で製造

――ハイボルテージ・パワー部門の事業内容について教えてほしい。

Steve Lambouses氏 車載市場、産業市場を注力用途市場に据えて、パワーMOSFETやIGBTなど各種パワーデバイス用の絶縁型ゲートドライバ製品を展開している。そしてゲートドライバに加えて、コントローラICやパワーデバイスとしてGaNを用いたFET(以下、GaN-FET)製品の展開も強化している。

 車載市場に対しては、オンボードチャージャー(以下、OBC)、インバーター、DC-DCコンバーターという高耐圧が求められる領域に特化して、ソリューションを構築している。

――高耐圧のパワー素子としては、現状、シリコン(Si)を用いたIGBTが主流であり、次世代ではGaNとともにSiC(炭化ケイ素)によるMOSFETの普及が見込まれている。TIとしては、GaN以外のパワー素子は手掛けないのか?

Texas Instruments ハイボルテージ・パワー部門バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャ Steve Lambouses氏

Lambouses氏 パワートランジスタ素子としては、IGBT、SiCを生産する予定はない。GaN-FETだけの生産になる。

 ただし、ゲートドライバ製品については、IGBT向けはもちろんのこと、SiC向けも積極的に開発し、サポートしていく。TIとしては、Si-IGBT、GaN-FET、SiC-FETなどどのパワー素子に対しても、最適なソリューションを展開する。GaN-FETを用いるシステムに対しては、ゲートドライバ、コントローラだけでなく、GaN-FETもTIが提供するという形になるということだ。

――なぜ、GaN-FETは、自社での開発、製造を行うのか。

Lambouses氏 いくつかの理由がある。1つは、GaN-FETは、集積に向くデバイスであるという点だ。GaN-FETであれば、ゲートドライバや保護回路をシングルパッケージに収めることができる。

 2つ目は、既存の自社工場製造ラインを活用して、生産できる点だ。長く実績があり、生産効率の高い自社工場で製造することで、価格競争力のある製品を提供できるためだ。

 また、GaN-FETの特長の1つである高速スイッチングを生かすための高性能DSP製品「C2000」がTIにはあるという点も、われわれがGaN-FETに投資していく理由になっている。

ディスクリート製品は提供せず、ゲートドライバとの組み合わせで

――ゲートドライバやコントローラとの相性からGaN-FETに投資するとの考えだが、GaN-FET素子単体、ディスクリートでの提供はしないのか。

Lambouses氏 ディスクリートでの提供は考えていない。なぜなら、GaN-FETの性能を最大限に引き出すには、密にカップリングした最適なゲートドライバを近くに置くことが重要になる。そのため、われわれは、GaN-FETとゲートドライバ、保護回路をシングルパッケージ化して提供していく。

――GaN-FETを手掛けるメーカーは多い。その中で、TIのGaN-FET製品の特長はどこか。

Lambouses氏 マッチング済みのゲートドライバやDSPなど優れた周辺デバイスとともに提供できる点や、自社生産によるコスト競争力などとともに、信頼性の高さが特長だ。GaN-FETについては10年以上前から研究開発に着手し、量産も5年以上の実績がある。その間、2500万時間以上の信頼性試験データを蓄積してきた。こうした膨大なデータを持っているGaN-FETベンダーは、TI以外にはないと自負している。

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