米国の大手EDAベンダーであるSynopsysは、英国に拠点を置くインチップモニタリング技術企業のMoortecを買収したと発表した。Moortecの技術は、Synopsysが2020年10月に発表した「Silicon Lifecycle Management(SLM)」プラットフォームの一端を担っている。
米国の大手EDAベンダーであるSynopsysは、英国に拠点を置くインチップモニタリング技術企業のMoortecを買収したと発表した。Moortecの技術は、Synopsysが2020年10月に発表した「Silicon Lifecycle Management(SLM)」プラットフォームの一端を担っている。
Synopsysは、取引の条件は同社の財務上重要ではないとして明らかにしていない。Synopsysのテストマーケティング担当シニアディレクターを務めるStephen Pateras氏は、米国EE Timesに対し、両社は約1年間の協議を経て、Moortecのスタッフ約60人が英国とその他の地域に残ることなどを決定したと語った。
SoC(System on Chip)はますます複雑になっており、実世界での動作を理解することが難しくなっている。そのため、Synopsysによる今回の買収は、ツールやソフトウェア企業のチップモニタリングおよび完全なライフサイクル管理の提案にとって重要になる。
Moortecの買収は、2020年前半のQualteraの買収に続くものとなる。Pateras氏によると、Synopsysは、Moortecの技術によって提供されるシリコンデータを設計プロセスの改善に活用したいと考えだという。
これにより、2020年6月に英国のIP(Intellectual Property)ベンダーであるUltraSoCを買収したSiemensに対抗したい構えだ。SiemensはUltraSoCの買収により、シリコンライフサイクルソリューション「Tessent」を強化した。
Pateras氏は、「Moortecの技術を活用したSynopsysのライフサイクル管理ソリューションとTessentのソリューションの違いは、高度な分析である」と述べている。
SynopsysのCOO(最高執行責任者)を務めるSassine Ghazi氏は、Moortecの買収について、「当社は、ダイナミックな半導体業界の進化するニーズに対応したシリコンライフサイクル最適化ソリューションの提供に向けて、イノベーションのロードマップを実現し続けていく。この買収によって、最先端プロセスノードの包括的なデバイス向けデータ分析主導型ソリューションを顧客に提供し、SLMプラットフォームの拡張を加速させたい」と述べている。
インチップモニタリングは、変化しやすい物理的および機能的な状態をリアルタイムに管理することで、性能と信頼性を高められることから、高度なプロセスノードに必要不可欠なものとなっている。Synopsysは、Moortecの技術を活用して、インチップのプロセス・電圧・温度(PVT)センサーと制御サブシステムを追加するという。
Moortecの技術は、AMDやams、Broadcom、Ericsson、Intel、NVIDIAなど、世界最大のファブレス企業および垂直統合型デバイスメーカー(IDM)の多くが採用しており、5nmまでのプロセスノードの数百種類の半導体設計に採用されている。
Moortecは、2005年にStephen Crosher氏とFraser Phillips氏、元Zarlink Semiconductorのエンジニアチームが共同で設立し、PVTセンサーを使用したインチップモニタリング技術を提供している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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