東芝と高輝度光科学研究センター(JASRI)および、東北大学は、HDD用書き込みヘッドの磁化挙動を100億分の1秒という高い精度で画像化することに成功した。東芝は、次世代HDD向け書き込みヘッド開発に、今回の解析技術を応用していく。
東芝と高輝度光科学研究センター(JASRI)および、東北大学は2020年11月、HDD用書き込みヘッドの磁化挙動を100億分の1秒という高い精度で画像化することに成功したと発表した。東芝は、次世代HDD技術「エネルギーアシスト磁気記録」向け書き込みヘッド開発に、今回の解析技術を応用していく。
本格的なIoT(モノのインターネット)時代を迎え、データ量は爆発的に拡大する見通しである。こうした中、主な記憶装置であるHDDでも、さらなる大容量化とデータ転送速度の高速化が求められている。これを実現するために重要となるデバイスの1つが、書き込みヘッドである。しかし、これまでは磁化挙動シミュレーションによる解析や、間接的な解析によって推測するしかなかったという。
そこで今回、東芝とJASRI、東北大学は、大型放射光施設「SPring-8」のビームライン「BL25SU」に設置された走査型X線磁気円二色性顕微鏡装置を用いて、HDD用書き込みヘッドの挙動を正確に把握するための新たな解析手法を開発した。
具体的には、SPring-8の蓄積リングから周期的に生成されるX線パルスに同期させ、その10分の1という周期で、書き込みヘッドの磁化を反転させるようタイミング制御を行い、時間分解測定を実現した。これにより、集めたX線を書き込みヘッドの記録媒体対向面上で走査し、磁気円二色性を利用して磁化の時間変化を画像化することに成功した。
時間分解能は50ピコ秒、空間分解能は100nmである。これにより、書き込みヘッドの微細な構造と高速動作の解析を可能にした。X線を集める素子の改良などにより、分解能はさらに向上できる可能性があるとみている。
今回開発した手法を用い、書き込みヘッドの反転時における磁化変化を解析した。この結果、主磁極部分の磁化反転が1ナノ秒以内に完了することを確認した。また、主磁極部分の磁化反転でシールド部分に生じる、磁化の空間的パターンも観測できたという。
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