コロナ禍にあっても力強い成長を続ける半導体市場。2050年には、どのくらいの市場規模になっているのだろうか。世界人口の増加と、1人当たりが購入する半導体の金額から予測してみよう。
2020年は新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)に翻弄された1年となった。ことし(2021年)こそはコロナの脅威が去って、希望に満ちた年になって欲しい……と思ったのもつかの間、1月7日に首都圏の1都3県に緊急事態宣言が発出されてしまった。年の初めから大きくつまずいてしまい、この先が思いやられる。
ところが、世界半導体市場と製造装置市場はともに、コロナ禍にあっても成長を続けている(拙著記事『半導体産業はコロナに負けない! 製造装置市場の動向を読み解く』、2020年7月27日)。半導体市場は、2019年はメモリ不況により4123億ドル(以下、特に記載がない限り「米ドル」とする)に落ち込んだものの、2020年はコロナの悪影響を受けずに4331億ドルに回復し、2021年にはメモリバブルだった2018年の4688億ドルを超えて、過去最高の4694億ドルを記録する見込みである(図1)。
一方、製造装置市場は、2020年12月10日のSEMIの発表によれば、2020年は2019年の596億ドルから16%増加して過去最高の689億ドルを記録し、2021年に719億ドル、2022年に761億ドルになると予測されている(参考:SEMIプレスリリース)。これは、前掲拙著記事の予測を大幅に上回っている。
日本を含めた世界はコロナの危機がより深刻化しているが、前述の通り、世界半導体産業は非常に好調で、それに関わる者としては「不幸中の幸い」という思いがする。そこで2021年最初の記事として、2050年に世界半導体市場がどれだけ成長するかを予測してみたい。
なお、あえて2050年を設定しているのは、人工知能(AI)が人類の能力を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が2045年に訪れるといわれており、それ付近を意識しているからである。
実は、筆者は2011年に、「世界半導体市場は毎年1125億ドルずつ増大して2050年には7500億ドルになる」ことを予測した(図2)(『世界市場はどこまで成長するか』/電子ジャーナル、2011年11月号)。しかし、2010年の世界半導体市場は3000億ドルであり、40年後の2050年にその2.5倍に成長するという予測に対して、「そんなに成長するとは思えない」という批判を多数受けたことを記憶している。
そこで、本稿では、まず、2011年にどのようにして2050年の成長予測を行ったかを振り返る。次に、それから約10年たった2020年に、この予測がどうなったかを検証する。さらに、再度2050年の世界半導体市場の予測を試みる。
結論を先取りすると、2050年の世界半導体市場は、8622億〜1兆123億ドルになると予測した。ただし、短期的には、今後も続く米中ハイテク戦争が世界半導体市場の成長を阻む可能性がある。しかし、人類にとって半導体は必要不可欠なものであり、人口が増加し、人類の文明が進化する限り、半導体市場は拡大を続けると確信している。
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