京セラは、60GHz帯域のミリ波センサーにより心拍や呼吸、機械振動などの微細振動を高い精度で検知・抽出できる「非接触インテリジェントミリ波センシングシステム」を開発した。2023年にもサンプル出荷を始める予定。
京セラは2022年10月5日、60GHz帯域のミリ波センサーにより心拍や呼吸、機械振動などの微細振動を高い精度で検知・抽出できる「非接触インテリジェントミリ波センシングシステム」を開発したと発表した。2023年にもサンプル出荷を始める予定。
開発した非接触インテリジェントミリ波センシングシステムは、独自の材料および製造技術を用いて開発した低損失のミリ波基板や、高度な信号処理技術などを組み合わせることで、微細な振動を高い精度で検知/計測することに成功した。
非接触インテリジェントミリ波センシングシステムは、大きく3つの機能を備えている。それは、「心拍/呼吸センシング」「動体/生体/モーションセンシング」および、「振動センシング」である。例えば、心拍/呼吸センシング機能では、心音間隔や心拍数、心音波形の検出、心拍変動解析などを行うことができる。振動センシング機能では、物体の振動検知や特徴量の検出などが可能である。
しかも、「非接触でマイクロメートル単位の微細な振動を検出可能」「心拍間隔を1ミリ秒以下の高い時間分解能で測定可能」「ミリ波センサーやエッジ端末、クラウドシステムなどに対し、用途に応じたソフトウェアIPを実装することで機能拡張が可能」といった特長がある。
具体的には、LDV(光学式ドップラー振動計)と比べても高い精度で振動を検知できることを確認したという。心拍間隔(HF帯域含め)誤差は±10ミリ秒以内、心拍変動スペクトル誤差は±10%以下をそれぞれ達成した。時間分解能が1ミリ秒以下のため、通常のヘルスケア測定に加え、感情や自律神経の分析も可能になるとみている。
必要な機能を実現するためのソフトウェアIPとしては、「基本振動検知用」に加え、「生体信号検知用」「モーション/体動検知用」「高精度の心拍/呼吸検知用」などを用意した。さらに、AI(人工知能)技術の研究も進めているという。
試作した非接触インテリジェントミリ波センシングシステムには、60GHz帯域FCM方式のミリ波センサーを採用した。外形寸法は64.5×63.0×23.82mmである。使用温度範囲は−40〜60℃。現時点ではセンサーから1.5m離れていても、人の心拍が検知できることを確認している。被測定物の振動量によっては3m程度まで検知が可能である。
非接触インテリジェントミリ波センシングシステムについて同社は、自宅や施設におけるヘルスケアの他、異常を検知する人感センサーとしての活用などを提案していく。また、工場や建造物におけるIoT振動センサーや作業現場における人感センサーなどの用途も対象となる。さらに、自動車の運転手や同乗者の体調管理/車内への閉じ込め防止といった社会課題の解決も視野に入れる。
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