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GXで高まる電源IC需要に備え、積極投資を続けるトレックストレックス・セミコンダクター 代表取締役社長 芝宮孝司氏

小型・低消費電力を特長とした独自の電源ICを展開し、事業規模を拡大させるトレックス・セミコンダクター。電源ICは、グリーントランスフォーメーション(GX)が進む中で中長期的にさらなる需要拡大が見込まれており、同社代表取締役社長の芝宮孝司氏は「将来の需要増に向けしっかりと投資していく」として供給能力の増強を推し進める。子会社で半導体受託製造事業を手掛けるフェニテックセミコンダクターを含めた供給能力増強策を中心に、技術/製品開発方針なども含め芝宮氏に2023年事業戦略を聞いた。

» 2023年01月12日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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産業機器、自動車堅調で過去最高の売上高を記録

――2022年の業績を振り返ってください。

芝宮孝司氏 業績としては順調な1年だった。直近で発表している業績、2023年3月期上期(22年4〜9月期)業績でも、トレックス・セミコンダクター単体および、(子会社で半導体受託製造事業を手掛ける)フェニテックセミコンダクターともに、半期としては過去最高の売上高を記録した。円安影響による売上増効果を除いても、計画以上の成果になった。

――好業績の要因はどのように分析されていますか。

芝宮氏 2020年から全般的に半導体不足の状況が続く中で、多くの受注残を抱え、供給能力の増強を急いできた。ファブレスであるトレックスとしては、フェニテックや社外の工場の協力を仰ぎ、前工程、後工程ともに生産能力の強化に努め、2021年初めごろに比べ、20%程度の供給能力増を実現した。一定の能力増強を迅速に行えたことで、競合品からの置き換えにも一部で成功したことなども好業績につながったと分析している。

 2022年夏ごろから民生機器向けの需要が一段落し冷え込んでいるものの、2022年末になっても産業機器向け、自動車向けの需要は堅調を維持している。一時期に比べ納品までのリードタイムは通常に戻りつつあるがまだ足りていない部分もあり、供給能力の増強は引き続き行っていく。

一喜一憂せず、中長期の需要拡大を見据えて積極投資

――2023年の市況についてはどのように見られていますか。

芝宮氏 2020〜2022年と急激に半導体需要は拡大したため、世界経済が下降局面にある2023年の半導体需要は踊り場を迎えると想定している。ただ、2030年ごろまでの中長期的な視点で半導体需要をみれば、確実に需要は拡大していく。半導体を使用する用途の増大や、グリーントランスフォーメーション(GX)の進展による効率的なパワーデバイス/機器への置き換えが予想され、2030年までの10年間で半導体需要は2倍になるという見方もある。

 短期的な需要の変動には一喜一憂せず、中長期の需要拡大を見据えていく。

――中長期の半導体需要拡大に向けては供給能力増強が重要になります。

芝宮氏 中期経営計画として2026年3月期に売上高350億円、営業利益40億円という数値目標を掲げた中で、2023年3月期は売上高330億円、営業利益50億円を見込み、利益目標については前倒しで達成できる見込みになっている。計画よりも前倒しで得られた利益はしっかりと投資に充て、供給能力の増強も前倒ししている。特に短時間での増強が難しい前工程の生産能力の確保に向けて動いている。

トレックスグループの売上高推移と中期経営計画売上高目標[クリックで拡大] 出所:トレックス・セミコンダクター

 2022年には海外ファウンダリー1社と長期生産委託契約を締結した。強化している中高耐圧品や高機能/高性能な新製品の製造に必要な8インチウエハー生産ラインの確保を目的に、ファウンドリーに工場増強のための一部資金を出資するという従来よりも一歩進めた協力関係を結んだ。増設分のラインは、2025年3月期から量産稼働し、この海外ファウンドリーのトレックス向け生産量は、2028年3月期には現状の6倍に達する見込みだ。

 加えて、フェニテック鹿児島工場でもクリーンルームの新設を含めトレックス向け生産ラインの拡大を行っており、同工場におけるトレックス向け生産量は2026年3月期に現状の3倍にする計画だ。

 こうした投資の結果、2025年には2021年比でほぼ1.5倍の生産能力を確保できることになる。

小型/低消費電力、トレックスらしい製品を拡充

――技術/製品開発方針について教えてください。

芝宮氏 注力している自動車、産業機器向けでは、中高耐圧、大電流対応といった基盤技術の開発を継続していく。耐圧では20〜40Vの開発を終え、現在60Vの技術確立に向け着実に開発を進めている。電流についても、1Aから6A、10Aと開発が進み、120℃や150℃といった高温対応も進んできている。地道に開発してきたこれら中高耐圧/大電流の基盤技術をベースに、DC-DCコンバータとコイルを一体化させた「micro DC/DC」などトレックスらしい小型で特長のある高付加価値製品の拡充を並行して実施していく。

 産業機器などに向けた高付加価値製品としては、順方向電圧がゼロで逆方向電流を流さない理想ダイオード「XC8110/XC8111シリーズ」の量産をこのほど、開始した。一般的なダイオードと比べても小型という特長があり、顧客の反応は良い。

理想ダイオード「XC8110/11シリーズ」の概要[クリックで拡大] 出所:トレックス・セミコンダクター

 また将来的には、フェニテックがこれまで製造を手掛けてきたIGBTやパワーMOSFETといったパワーデバイスもトレックスとして事業化していく予定だ。パワーデバイス分野でもトレックスらしい付加価値のある製品をラインアップする方針で、1.5Vなどの低電圧駆動パワーMOSFETや低オン抵抗のスプリットゲート型MOSFETやフィールドストップ型IGBTなどの開発を進めている。

――パワーデバイスではSiC(炭化ケイ素)など新素材の応用が注目されています。

芝宮氏 トレックスとしても、フェニテックとともにSiCパワーデバイスの開発を進めており、まずはSiCによるショットキーバリアダイオード(SBD)のサンプル出荷を来期に予定している。また2020年から資本提携を結ぶノベルクリスタルテクノロジーとの協業を通じた酸化ガリウムデバイスの開発も継続して行っている。

――ウェアラブル端末やモバイル機器などに向けた製品開発についてはいかがですか。

芝宮氏 ウェアラブル端末やモバイル機器に向けた低電圧領域は、基盤技術が整っており、小型/低消費電力という特長を追求した高付加価値製品のラインアップ拡充に集中していく。超低消費電力を実現したmicro DC/DC「XCL232シリーズ」など、フラグシップになる製品を継続して投入していく。さらにはパートナーと連携し、こうした小型/低消費電流の電源ICと、固体電池やワイヤレス空間電力伝送(WPT)技術など周辺技術と組み合わせたソリューション提案も積極的に実施していく。

次の需要の立ち上がりに備える

――2023年の抱負をお聞かせください。

芝宮氏 世界の経済情勢を踏まえると、2023年前半の半導体市況は厳しい局面を迎えることになるだろう。

 ただ、中長期的には半導体需要は成長を続けていくことから、2023年夏以降のタイミングで、再び需要が立ち上がってくることになる。2020〜2021年のように一部で供給が追い付かないということにならないよう、積極的な投資を継続して次の需要の拡大に備え、需要増にしっかりと対応していく。


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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年2月9日


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