図3に、TSMCのテクノロジーノードごとの売上高を示す。TSMCのファウンドリービジネスの最大の特徴は、基本的に一度立ち上げたテクノロジーノードの工場を立ち下げないことにある。そのため、最も古い0.25μm以上から、最先端の3nm世代(N3)まで、まるで地層を積み重ねるように、各ノードの売上高が加算されている。ただし、例えば、N10のように、途中で消えていくノードもまれに存在する。
ここでTSMCは、N7以降を先端ノードと呼んでいるが、そのN7の売上高が計上されたのは2018年Q3である。そして、TSMCは2019年Q3に、世界で初めて最先端のEUV(極端紫外線)露光装置をN7+に量産適用した。ただし、N7の月産キャパシティーが15万枚程度である中で、N7+は1〜2万枚程度だと思われる。なお、最近はN7+をN6と呼んでいるようである。
その後、2020年Q3にN5の売上高が計上された。EUVの量産適用について、N6が孔パタンなどに限定されていたのに対して、N5では配線層などにもEUVが適用された。そして、N7とN5の売上高が急拡大していき、2022年Q3には初めて200億米ドルを超えた。2019年Q3からの3年間で、四半期売上高は2倍以上になった。
このように、2018年以降、TSMCの売上高は、先端のN7およびN5の先端ノードがけん引してきた。また、2019年以降では、EUVを適用したN6とN5がTSMCの躍進の原動力になっていたと考えられる。そして、今後は、N5に加えてN3がTSMCをけん引していくと思われる。
ここまで、テクノロジーノードごとの売上高を積算したグラフを見ながら、TSMCの業績を俯瞰した。ところが、視点を変えるとまるで異なる景色が見えてきた。
図4に、各テクノロジーノードの売上高の推移を示す。筆者は、このグラフを見て、「うわっ」と叫んでしまった。2018年Q3に登場したN7が、2022年Q2に54.5億米ドルでピークアウトし、2023年Q3に約半分の27.6億米ドルに急減していたからである。
前述した通り、まれに、N10のように消えていくノードがある。しかし、N7はTSMCの稼ぎ頭のノードだったはずだ。そのN7の売上高が半減している。このまま、N7は消えていくのだろうか? TSMCの四半期のウエハー出荷枚数がピーク時より100万枚以上減少していることを説明したが、もしかしたらそれは、N7の出荷枚数の減少に原因があるのではないか?
では、なぜ、N7が半減したのか? 2022年夏頃から、N7用工場の稼働率が急速に減少しているという話が漏れ聞こえてきていた。そのときは、コロナ特需の終わりによる半導体不況のために、一時的にN7の需要が下がっていると思っていた。
しかし、原因は別のところにあるかもしれない。
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