業績の低迷が2023年第2四半期で底を打ち、第3四半期に回復に転じたTSMC。だが、ウエハー出荷数に焦点を当ててみると、ある“異変”が浮かび上がる。その異変を分析すると、TSMC熊本工場に対する拭い去れない懸念が生じてきた。
前回の本コラム「本当は半導体売上高で第1位? AIチップ急成長で快進撃が止まらないNVIDIA」で、2023年第2四半期(Q2)の世界半導体売上高ランキングは、1位がTSMC、2位が米NVIDIA、3位が米Intel、4位がSamsung Electronics(以下、Samsung)かもしれないことを報じた。
では、2023年Q3に、そのランキングはどうなったのだろうか? 10月19日に決算発表会を行ったTSMCは172.8億米ドル、26日に決算を発表したIntelは142億米ドル、30日に半導体部門の業績を発表したSamsungは16.44兆ウォン(125.6億米ドル)で、NVIDIAは160億米ドルと予測されている。
NVIDIAと他の3社の会計年度が異なるため、上位4社の直接比較はできない。そこで、TSMCなどCalendar Year(CY)の場合は四半期決算の最終月の3月、6月、9月、12月にそれぞれの売上高をプロットし、NVIDIAの場合はFiscal Year(FY)の最終月の4月、7月、10月、1月で売上高をプロットしたグラフを作成した(図1)。
その結果、2023年9〜10月の世界ランキングは6〜7月と同様に、1位がTSMC、2位がNVIDIA、3位がIntel、4位がSamsungになりそうである。もし、この予測が正しければ、TSMCは2022年9月以降の1年間、ランキング1位を維持したことになる。
それでは、TSMCの業績は好調かというと、そうとは言い切れない。確かに、2022年12月以降、低下していた売上高は、2023年6月で底を打って回復に転じている。
しかし、四半期ごとのウエハー出荷枚数、テクノロジーノード別の売上高、プラットフォーム別の売上高、地域別の売上高などを分析してみると、「ん?」と首を傾げたくなる異変が見て取れる。そして、その異変から、TSMC熊本工場の行く末に暗雲が垂れ込めているように思えてならないのである。
本稿では、まず、TSMCの異変について見てみよう。
図2に、TSMCの四半期ごとのウエハー出荷枚数を示す。2022年Q3に過去最高の397.4万枚を記録したが、その後、急激に出荷枚数が減少し、2023年Q2には100万枚以上少ない291.6万枚に落ち込んだ。同年Q3に、ウエハー出荷枚数の急激な落ち込みは止まり、290.2万枚となったが、低調であることには変わりがない。
TSMCの四半期ごとの売上高は、2023年Q2で底を打ち、Q3に回復に転じたと前述したが、恐らくウエハー単価が上がっただけで、四半期で約400万枚ある生産キャパシティーの4分の1以上は、稼働が止まったままではないのか?
では、TSMCの半導体工場において、どのテクノロジーノードが低調なのだろうか?
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