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強磁場で超伝導ダイオード効果を示す素子を開発ボルテックスのピン止め効果が起源

大阪大学と東北大学の共同研究グループは、鉄系超伝導体であるセレン化・テルル化鉄「Fe(Se,Te)」を用いた薄膜素子を作製し、1〜15テスラという強い磁場中で、「超伝導ダイオード効果」を観測した。

» 2025年05月16日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

ダイオード効率と2次高調波抵抗の間でスケーリング則が成立

 大阪大学大学院理学研究科の小林友祐氏(当時博士前期課程2年)や塩貝純一准教授、松野丈夫教授、東北大学金属材料研究所の野島勉准教授らによる共同研究グループは2025年5月、鉄系超伝導体であるセレン化・テルル化鉄「Fe(Se,Te)」を用いた薄膜素子を作製し、1〜15テスラという強い磁場中で、「超伝導ダイオード効果」を観測したと発表した。

 Fe(Se,Te)は、母物質のFeSeに比べ「高い超伝導臨界パラメーター」や「強いスピン軌道相互作用」を示すことが分かっていた。しかし、電流を流す方向によって、「超伝導状態」と「常伝導状態」の切り替えが可能となる「超伝導ダイオード効果」に関しては、これまで詳細な報告はなされていなかったという。

スピン軌道相互作用とボルテックスの結合による整流効果の概念図[クリックで拡大] 出所:大阪大学、東北大学 スピン軌道相互作用とボルテックスの結合による整流効果の概念図[クリックで拡大] 出所:大阪大学、東北大学

 研究グループは今回、Fe(Se,Te)を用いて作製した薄膜素子を用い、広い温度や磁場範囲において臨界電流を調べた。そして、1〜15テスラという強い磁場環境で、「超伝導ダイオード効果」を測定することに成功した。

 これとは別の実験を行い、スピン軌道相互作用の指標となる2次高調波抵抗についても、磁場・温度依存性を評価した。この値を超伝導ダイオード効果の結果と比べたところ、ダイオード効率と2次高調波抵抗の間で、磁場や温度によらないスケーリング則が成り立つことが分かった。この超伝導ダイオード効果の起源が、スピン軌道相互作用によって非対称化されたボルテックス(超伝導量子化渦)のピン止め効果によることを突き止めた。

左図はFe(Se Te)薄膜素子における超伝導移転温度、臨界電流密度の磁場および温度依存性、臨界磁場の温度依存性。右図はダイオード効率の磁場・温度依存性[クリックで拡大] 出所:大阪大学、東北大学,左図はFe(Se,Te)薄膜素子における超伝導移転温度、臨界電流密度の磁場および温度依存性、臨界磁場の温度依存性。右図はダイオード効率の磁場・温度依存性[クリックで拡大] 出所:大阪大学、東北大学

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