レゾナックは、開発中の宇宙向け半導体封止材の評価実験を、2025年秋ごろにも国際宇宙ステーションで行う。宇宙線に起因する電子機器の誤動作を低減する封止材を用いた評価用半導体チップをISSへ輸送し、船内外に設置した材料暴露実験装置内の半導体チップを動作させた状態で、ソフトエラーの低減効果を評価する。
レゾナックは2025年6月、開発中の宇宙向け半導体封止材の評価実験を、2025年秋ごろにも国際宇宙ステーション(ISS)で行うと発表した。宇宙線に起因する電子機器の誤動作(ソフトエラー)を低減する封止材を用いた評価用半導体チップをISSへ輸送し、船内外に設置した材料暴露実験装置(MISSE)内の半導体チップを動作させた状態で、ソフトエラーの低減効果を評価する。
人工衛星には地球観測や通信などに必要なデータ処理を行うため、プロセッサなどの半導体デバイスが搭載されている。ただ、安定性が求められる宇宙向けプロセッサは、一般的なプロセッサに比べ演算能力が低い。
ところが近年は、人工衛星が自律的に動きを判断したり、低遅延で低軌道衛星間通信を行ったり、衛星上にデータセンター機能を持たせたりする研究も進んでおり、宇宙向けプロセッサにも高い演算能力が求められている。ここで課題の1つとなっているのがソフトエラーである。
こうした中でレゾナックは、宇宙線に含まれる中性子を吸収する材料を配合した半導体封止材を試作した。この中性子がソフトエラーを引き起こすといわれている。フリップフロップ回路を用いた地上での評価実験では、ソフトエラー率を約20%低減できることを確認した。
そこで今回、ISSで半導体封止材のソフトエラー低減効果を評価することにした。打ち上げやISSでの実験は米国の民間宇宙企業である「Axiom Space」に委託した。既に、評価用半導体チップを搭載した動作評価装置をMISSEに設置した。MISSEを搭載した人工衛星は2025年秋に打ち上げられる予定。
ISSにおける実験では、宇宙空間の放射線スペクトルの影響を検証する。その上で、宇宙向け半導体材料に求められる特性を特定するなど、新たな材料開発につながるデータを取得していく。
実験に用いた封止材によるソフトエラー低減効果が確認されれば、一般的な半導体チップをほぼそのまま宇宙向けに適用することができ、製造コストの低減や演算能力の向上が容易となる。
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