Samsung Electronicsが、Teslaと165億米ドルの契約を締結した。Teslaの次世代AIチップ「AI6」を、立ち上げが遅れている米国テキサス州のテイラー工場で製造する。この契約は、苦境にあるSamsung Electronicsにとって「回復に向けた一歩」になるのか。
Teslaが2025年7月27日(米国時間)、Samsung Electronics(以下、Samsung)との間で165億米ドル規模の契約を締結したと発表した。アナリストによると、これは苦境に立つSamsungが回復傾向にある暫定的な兆しだという。
TeslaのCEOであるElon Musk氏は、X(旧Twitter)の投稿で「Samsungは、立ち上げが遅れていた米国テキサス州のテイラー工場で、Teslaの次世代AIチップを製造する予定だ」と述べた。
「Samsungの巨大なテキサス新工場は、Teslaの次世代チップ『AI6』専用の製造工場となる。TSMCは、設計が完了したばかりの『AI5』を、最初は台湾で、その後はアリゾナ工場で製造する予定だ」(Musk氏)
Samsungのテキサス工場は、GAA(Gate-All-Around)技術向けの顧客を見つけるのに苦戦して立ち上げが遅れていたが、今回の発表は好転に向かう初めての兆候だといえる。
Samsungは、米商務省から「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)に基づいた条件付きの刺激策として66億米ドルの資金提供を受けたにもかかわらず、1年以上前からテイラー新工場の稼働開始を延期していた。同社は2024年8月に、米国EE Timesの取材に対し「テイラー工場は、1つ目が2026年に稼働を開始し、2027年には2つ目の工場が稼働する予定だ」と述べていた。
Forbesが報じたところによると、TeslaとSamsungの契約は2033年末まで続く予定だという。
Samsungは2022年に、「3nm世代のプロセスノードで世界初となる生産を実現することで技術リーダーシップを確立する」と主張していたが、こうした動きについて一部の業界専門家の間では「リスクが高すぎる」との見方で一致していた。その一方で同社のメモリ事業は、AI拡大に不可欠な広帯域メモリ(HBM)の供給をめぐる競争において、同社よりも規模が小さいライバル企業であるSK hynixに後れを取る結果となった。
Musk氏は「Samsungは、製造効率を最大化する上でTeslaが支援を提供することに合意している。これは非常に重要な点であり、私は進捗ペースを加速させるべく、個人的に製造ラインに足を運ぶことになるだろう。工場は、私の自宅からそう遠くはない便利な場所にある」と述べている。
Samsungは、Teslaの電気自動車(EV)に搭載されるオートパイロット機能を実行する最新チップ「AI4」を製造している。同社は2021年11月に、170億米ドルの投資計画の一環として、テイラー工場建設プロジェクトを発表した。
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