メディア

Teslaとの契約はSamsungを回復に導くのか次世代AIチップ製造で165億ドル(2/2 ページ)

» 2025年08月05日 11時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]
前のページへ 1|2       

中国勢との戦いに直面するTesla

 Teslaは、中国のEVメーカーが市場シェアを拡大する中で、独自の課題に直面している。2023年には中国のBYDがTeslaを追い抜き、世界最大のEVメーカーとなった。

 SemiAnalysisのアナリストであるJeff Koch氏は、EE Timesの取材に対し「Samsungが実行できるかどうかはまだ分からない」と述べている。

 「Teslaの発注量は、AppleやQualcommのような超大口顧客と比べると桁違いに少ないが、それでも知名度が高く、確かなフラグシップ顧客だといえる。Samsungは、1年以上にわたってネガティブなニュースが続いた後、ついに勝利をつかむことができた。Teslaは、米国で半導体チップを製造していることをアピールでき、TSMCへのリスク集中度を下げることができる」(Koch氏)

 技術調査会社であるTechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏は、EE Timesに対し「TeslaとSamsungの契約締結は、非常に画期的なことだ」と述べている。

両社とも「切羽詰まった状況」

 「この契約は、両社とも切羽詰まった状況にあるということを示している。Samsungは先進プロセス技術の問題を解決する必要があり、一方でTeslaは、米国内で最先端半導体の製造能力にアクセスする必要がある。TSMCのアリゾナ工場は、現在予約でいっぱいだ」(Hutcheson氏)

 Samsungとの契約により、Musk氏はSamsungの製造関連の課題解決に直接関与しながら、こうした問題に対応できるようになる。同氏は「今までずっとこうしてきた」という、従来型の製造手法に対する凝り固まった考え方を打ち破ることで効率性を実現する、世界的な“製造業の達人”だ。

 匿名を条件に取材に応じたあるアナリストは「2033年まで拡大されている今回の契約は、Teslaの自動車販売台数に依存することになるが、同社の財務状況には疑問の余地がある」と述べる。

 米商務省のCHIPS Program Office(CPO)は、米国で投資を行う半導体メーカーにCHIPS法の補助金を提供する役割を担っており、EE Timesが2024年に行った取材の中で、「CHIPS法補助金を獲得できるかどうかは、メーカー各社の生産マイルストーンを実現する生産能力に応じて決まる。CHIPS法プログラムの530億米ドルの補助金は、衰退する米国半導体業界の復活を目的としている」と述べている。

 Koch氏は「米国のオンショアリング実現という野心的な目標において、テイラー工場への顧客コミットメントはどうしても必要なものだった。これにより、プロジェクトを成功させる、または少なくとも現状のまま継続させる可能性が非常に高くなる。Samsungは、GAAプロセスに関しては3年以上にわたって苦戦しており、継続的にリブランドの実現に取り組んできたが、状況を大きく改善するには至っていない。同社が優れた歩留まりと妥当なコストでTeslaチップの量産出荷を開始できるようになった時に、『好転した』と言えるようになるだろう」と述べる。

 Teslaのような半導体設計メーカーは、SamsungやTSMCに発注するにあたり、GAAのような新しいプロセス技術の歩留まりの問題に直面する可能性があることから、数十億米ドル規模のリスクを負うことになる。

 Koch氏は「Teslaは、SamsungからAI6に関して非常に有利な条件を得ている可能性が高い。これは前向きな最初の一歩だが、Samsungは、歩留まりや生産能力、さらに最終的に先進ノードを適用した良品チップの出荷数量などに関しては、TSMCの足元にも及ばない」と述べている。

 Hutcheson氏は「TSMCは、信頼できる唯一のプレイヤー企業として、最先端半導体プロセスノードで確固たる地位を維持している。そして、かつてのチャンピオンであり、現在回復を遂げつつあるSamsungとIntelの2社が、返り咲きを狙っている」と述べる。ある匿名のアナリストは「Samsungの勝利は、Intelにプレッシャーをかけることになるだろう」と語った。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.