東洋紡は2025年10月、ポリ乳酸樹脂を原料にした光学フィルムの試作品を新開発した。光透過性の高さ、屈折率の低さといった光学特性から、半導体製造工程やディスプレイ検査工程などの製造プロセス向け光学フィルムとして、早期の採用を目指すとする。
東洋紡は2025年10月、ポリ乳酸樹脂を原料にした光学フィルムの試作品を新開発したことを発表した。すでにサンプルの提供を開始していて、高い光透過性や低い屈折率といった光学特性から、半導体製造工程やディスプレイ検査工程などの製造プロセス向け光学フィルムとして、早期の採用を目指すとする。
ポリ乳酸は、植物から得られるでんぷんや糖類を原料として製造されるバイオマス由来の樹脂。紫外線や可視光線、赤外線など広い波長の光を透過する透明性の高さや、フッ素樹脂に次ぐ屈折率の低さといった光学特性を有し、光レーザーを利用する製造プロセスに適した素材として、半導体やディスプレイ製造工程における、光学的な検査・処理用途での展開が期待されている。
一方、これらの特性を安定して発現させるには、結晶化や分子配向を精密に制御する高度な加工技術が必要になる。かつ工業用途で使用するには耐熱性や機械強度、加工時の寸法安定性なども求められるという。
東洋紡は今回、フィルム内部に粒子を含まない独自の構造設計技術を活用し、光学用途で求められる高い透明性、低い屈折率を実現。さらに独自の二軸延伸加工技術により、従来品と比べて引張強度や寸法安定性といった機械特性の大幅な向上を実現した。表面のコーティング処理によって、優れた表面平滑性も有し、他素材との接着性を付与することもできる。
これらの特性により、製造工程で使うレーザー装置への適用範囲が拡大。半導体製造工程のベースフィルムとして用いた場合は、短波長、高エネルギーの紫外線を使用する加工プロセス作業の高効率化、仕上がりの高精細化が期待できるとする。
液晶ディスプレイの保護フィルムとして用いれば、可視光線を使った画素欠点などを発見するための検査の精度向上にも貢献できるという。屈折率がガラスに近い水準のため、飛散防止用途など、ガラスと貼り合わせて使用する際も、視認性を損なわないとしている。
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