富士キメラ総研は、機能性エレクトロニクスフィルムの世界市場を調査し、2030年までの予測を発表した。「ディスプレイ」や「半導体」「基板・回路」に向けた製品の市場規模は、2025年の約2兆5000億円に対し、2030年は3兆円を超えると予測した。
富士キメラ総研は2025年5月、機能性エレクトロニクスフィルムの世界市場を調査し、2030年までの予測を発表した。「ディスプレイ」や「半導体」「基板・回路」に向けた製品の市場規模は、2025年の約2兆5000億円に対し、2030年は3兆円を超えると予測した。
今回の調査対象は、「ディスプレイ」分野が偏光板保護フィルムや円偏光板保護フィルム、QDシートなど12品目。「半導体」分野がバックグラインドテープや非導電性接着フィルム(NCF)など9品目。「基板・回路」分野がACF(異方性導電フィルム)やFCCL(フレキシブル銅張積層板)、層間絶縁フィルムなど12品目。調査期間は2024年10月〜2025年2月。
ディスプレイ(LCD、OLED)分野は、コロナ禍に特需が発生した反動で2022年ごろまで市場は低迷した。その後は回復に転じ、2024年は1兆630億円を見込む。2023年に比べると9.4%の増加となる。今後は、ミニLEDに用いられる「QDシート」やOLED関連部材である「円偏光板保護フィルム」の需要が拡大すると予測した。
半導体分野は、2024年に前年比11.1%増4366億円を見込む。中でも、生成AI市場に向けたサーバ用CPUやAIアクセラレーターの需要が拡大しており、これらで用いられるフィルム製品に期待がかかる。
今回の調査では、NCFを注目製品の1つとして挙げた。複数のDRAMチップをTSV(シリコン貫通ビア)プロセスで積層するHBMにおいて、接合材料として用いられる。AIサーバではAIアクセラレーターとHBMを組み合わせて搭載するため、NCFの需要が拡大する。HBM以外でも3Dパッケージやアンダーフィルといった用途にも期待する。このため、2024年は33億円の市場規模が見込まれ、2030年には101億円と予測されている。ただ、新たな接合技術である「ハイブリッドボンディング」の採用が広まると、NCFの使用量は減少するとみている。
基板・回路分野の市場規模は、2024年に前年比15.0%増の8767億円を見込む。FPC(フレキシブルプリント基板)関連は、スマートフォン向けが大半を占める中、近年はxEV用LiB向けの需要が拡大する。リジット基板に用いられるフィルムは、AIサーバなどデータセンター関連に向けて、今後の伸びが期待されている。フィルムコンデンサー用フィルムは、家電製品や車載システムなどで幅広く採用されている。近年はxEVの駆動用インバーターや再生可能エネルギー関連でも需要が拡大する。
今回、もう1つの注目製品として挙げたのが「層間絶縁フィルム」である。主にFC-BGA基板に採用され、サーバ用CPUや高速通信機器などデータセンター関連向けに需要が拡大する。市場規模は2024年見込みの488億円に対し、2030年は1295億円と予測した。
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