米国政府は2026年1月、中国向けAIチップ輸出の方針を転換し、NVIDIA「H200」など一部製品の輸出を条件付きで認めた。輸出は個別審査の上、25%の関税などの厳格な管理がなされる。中国側も中国企業がこうしたチップを輸入する場合には一定数の国産チップを合わせて購入するよう求めていて、米中の半導体企業は政府の規制の間で板挟みの状況に置かれている。
停滞していた世界の半導体貿易の状況が一変した。2026年1月中旬、トランプ政権は米国の半導体企業に対して、中国市場を再び開放した。ただし、この動きには高い関税と厳格な物流規制、不安定な立法上の合意が伴っている。
NVIDIAとAMDは、中国からの強い需要に応えようとする中で、新たなルールに直面している。この要件は、両社のチップがAIを変えたのと同じくらい大きく、両社のサプライチェーンを変える可能性がある。
米国商務省の産業安全保障局(BIS)は2026年1月13日、先端コンピューティング製品の輸出ライセンス方針を「原則不許可」から「個別審査」に移行する最終ルールを制定した。
この新ルールは2026年1月15日から、NVIDIAの「H200」やAMDの「MI325X」のなどのハードウェアに適用される。これらのチップは最先端ではないが、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングには依然として重要だ。ただし、中国企業がこれらのチップにアクセスするには代償が伴う。大統領布告によって設定された25%の収益分配関税は、中国の技術成長から利益を得て、米国の産業を支援することを目的としている。
新たなルールでは、全面的な禁輸措置を、対象を絞った規制に置き換える。BISのガイドラインでは、総処理性能(TPP)が21000未満、メモリ帯域幅が6500Gバイト/秒未満のチップの輸出を許可している。AIタスク向けの大容量メモリを搭載したH200は輸出できるが、NVIDIAの最先端チップ「Blackwell」は引き続き中国市場から締め出されることになる。
最大の課題は技術的なことではなく、物流面だ。これらのチップが軍事利用されないよう、トランプ政権は中国への全ての出荷に対して、米国を経由した第三者機関によるチェックを義務付けている。このプロセスは同時に、25%の関税を確実に徴収するためのものでもある。
米商務省の産業安全保障次官であるJeffrey Kessler氏はこの方向転換を「必要な進化」と表現し、「管理された条件下で中国へのH200の販売を許可することは、米国の技術エコシステムを強化することになる」と述べている。
これは、米国がByteDanceやAlibaba Groupといった中国の巨大テクノロジー企業から資本を引き出して米国の研究開発を補助する一方で、中国には1世代遅れのハードウェアしか使わせないという戦略を示唆している。
中国もまた戦略的だ。当初、中国政府は新関税に抗議してH200の輸入を停止させたが、コンピューティング能力の需要増を踏まえ、すぐにこれを撤回した。中国政府は2026年1月下旬までに、大手テクノロジー企業による初期購入を承認した。その中にはByteDanceによるH200クラスのクラスタの大量調達も含まれ、取引価格は2026年だけで140億米ドルに上ると報じられている。
ただし、アクセスには制限がある。中国工業情報化部は現在、中国企業に対し、NVIDIA H200を輸入するごとに、Huaweiの「Ascend」シリーズを中心とする国産チップを一定数購入することを義務付けている。これによって中国企業は、高度なトレーニング向けにNVIDIA製ハードウェアを確保する代わりに、基本的なタスクには国産チップを使わざるを得なくなる。
こうした規制は中国のテクノロジー企業を厳しい立場に追い込んでいる。軍需品のユーザーではないことを証明するために米国の「顧客確認(Know Your Customer)」チェックをパスする必要がある一方で、さらにHuaweiのような国内企業を支援するという中国の要求にも応えなければならない。
これにより、多くの障壁を伴う分断されたシステムが生まれているが、欧米のチップは依然として重要だ。中国企業は2026年2月初旬までにH200を200万個以上発注していて、これはNVIDIAが現在供給可能な量をはるかに上回っている。
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