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onsemiのSynaptics買収が示す、エッジAIの本格到来フィジカルAIに重点(1/2 ページ)

onsemiが約70億米ドル相当の全株式交換による取引でSynapticsを買収すると発表した。同社にとって過去最大の買収となるこの取引での狙いは、エッジAI/フィジカルAIにある。

» 2026年07月14日 11時00分 公開
[Majeed AhmadEE Times]

かつてのCypress売却と逆の役割なったonsemi CEO

 onsemiのCEO、Hassane El-Khoury氏は再び大型買収を決断した。2019年、Cypress Semiconductorの新CEOに就任した同氏は、パワーおよびセンシング半導体を手掛けるドイツの半導体メーカーInfineon Technologies(以下、Infineon)への自社の売却を主導した。その結果、Infineonはコンピューティングおよびワイヤレス接続設計における存在感を強めることになった。

 時は流れ2026年、El-Khoury氏は、パワー、センシング、制御用半導体のサプライヤーであるonsemiを率いて、約70億米ドル相当の全株式交換による取引でSynapticsを買収することになった。これによってコンピューティングおよびコネクティビティ分野への参入を目指す。しかし、この取引には、コンピューティングとコネクティビティに加え、AIの要素が随所に見て取れる。

エッジAI/フィジカルAI市場に照準

 この取引はある意味、何よりもエッジAIに関するものだといえる。onsemiはプレスリリースで、「Synapticsの差別化されたエッジAIコンピューティングの事業基盤と、ヒューマンマシンインタフェースおよびワイヤレス接続ソリューションの強力なポートフォリオを加えることで、パワーおよびセンシングの枠を超えて、インテリジェントシステムへの事業拡大が期待できる」と述べている。

 一方で、onsemiは、フィジカルAIにより重点を置いているようだ。フィジカルAIは、ドローンやロボット、自動運転車などのデバイスに組み込まれたAIを指す、黎明期の技術であり、AIモデルをセンサーやモーター、アクチュエータなどのハードウェアと統合することで、環境を認識し、空間的な関係性を理解し、現実世界での作業を実行できるようにする。

 この事実は、onsemiにとって過去最大の買収となった今回の買収の背景にある物語も明らかにしている。

 米国アリゾナ州スコッツデールに本社を置くonsemiの市場評価額は461億7000万米ドルだ。同社はパワー半導体の主要サプライヤーで、車載イメージセンサーの最大手ベンダーでもある。そして、onsemiは今、自動車および産業分野での強みに加え、AIデータセンター向け電源分野でも主要プレイヤーの地位を狙っている。

 onsemiはデータセンター向けエネルギーグリッドにおいて確固たる地位を築いているが、Synapticsの技術によってインテリジェントエッジへの展開拡大や、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)スマートデバイス、自動運転、ヒューマノイドなどのフィジカルAIアプリケーション向けの、統合されたシステムレベルのソリューションの提供が可能になる。そのため、El-Khoury氏は、AIデータセンターを超えてエッジアプリケーションへとAIの事業機会を拡大するために、リアルタイムでの感知、決定、行動、適応という4つの技術の柱を掲げている。

 同氏は、SynapticsのエッジAIコンピューティング、ワイヤレス接続、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)技術と、onsemiの電源管理およびセンシングに関する専門知識を組み合わせることで、これら4つの柱を構築し、300億米ドル規模のフィジカルAI市場を獲得できると確信しているという。「フィジカルAIへの移行では、パワー、センシング、接続されたコンピューティング、制御がシームレスに連携する必要がある」(同氏)

onsemiは、自社のパワーおよびセンシングにおける強み(左)とSynapticsの接続されたコンピューティングに関するアセット(右)を組み合わせ、フィジカルAI分野の中核企業になることを目指す onsemiは、自社のパワーおよびセンシングにおける強み(左)とSynapticsの接続されたコンピューティングに関するアセット(右)を組み合わせ、フィジカルAI分野の中核企業になることを目指す[クリックで拡大] 出所:Synaptics

 業界関係者の多くは、この買収はエッジAIとフィジカルAIを狙ったものであるという見方で一致している。エンタープライズAIストラテジストのSanjeev Bode氏はLinkedInへの投稿で「これはAIが次に向かう方向を示す手掛かりである」と述べ、「AIの次の段階は、大規模AIモデルや大規模GPU、高額なデータセンター費用だけではない。物理世界を認識し、理解し、接続し、行動できるマシンに関するものになるだろう」と記している。

 今回の買収はまた、onsemiが電力/センシング企業から、エッジAIおよびフィジカルAI市場向けシステムサプライヤーへ進化する動きを加速させることになる。El-Khoury氏は「onsemiの電力、センシング、制御分野での強みと、SynapticsのAIコンピューティング、ワイヤレスコネクティビティ、HMI技術を組み合わせることで、いわゆるフィジカルAI分野の市場リーダーが誕生する」と述べている。

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