メモリ半導体業界は、楽観的な設備投資が進んでいる一方で、マクロ経済や運用などの側面で深刻な障壁に直面している。国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)は最近、AIインフラ投資バブルの可能性について、厳しい警告を発している。
BISは「AIツールから得られる利益が大規模な資本支出に見合わなかった場合、技術メーカーが急激に後退し、世界的な金融システムの深刻な崩壊につながる可能性がある」と警告する。短期的には、AIサーバがハイエンドメモリの需要を押し上げるが、一方でコンシューマー市場では低迷の兆候も見られる。TrendForceのレポートによると、契約価格の記録的な上昇により、PC/スマートフォン市場では消費者の手が届く価格帯の限界を超え、標準的なコンポーネント全体の価格上昇が穏やかになってきているという。
過剰供給に対する懸念も高まっている。半導体工場は、建設着工から歩留まりが安定するまでに少なくとも3年間を要するため、SK hynixやSamsung、Micronによる現在の数十億米ドル規模の投資の波が本格的な生産量増加へとつながるのは、2028年頃になる見込みだ。
しかし、TrendForceのアナリストTom Hsu氏はEE Timesへの電子メールの中で、このタイムラインについてもっと慎重な見解を提示している。「TrendForceの予測では、市場はAI主導の堅調な需要による後押しを受け、2028年に予測されている供給成長の大半を吸収するとみられる。長期契約の見直しは、深刻な景気後退が発生した場合にのみ行われる見込みだが、それはわれわれの基本的なシナリオには含まれてない」と述べている。またSEMIのTseng氏も「メーカー各社には、需要の変化の仕方に応じて設備導入や生産拡大のペースを調整する余地がまだ残っている」と指摘している。
この拡大競争をさらに複雑化させているのが、地政学的緊張だ。SK hynixとSamsungはいずれも、Mattson Technologyのような中国の装置メーカーへの依存を回避すべく、サプライチェーンの再構築を進めているところだという。
この戦略的転換は、中国のサプライヤーが米国商務省の「エンティティリスト」に追加された場合に生じる供給途絶のリスクを軽減することを目的としている。SK hynixとSamsungは重要なフォトレジストや熱処理装置について、代替サプライヤーを迅速に確保せざるを得なくなる。
企業の経営陣は、AIへの構造的シフトが、これまでのメモリ市場の好不況サイクルを根本的に変えるとの見解を示している。SK Group会長のChey Tae-won氏は、ナスダック上場後の景気後退懸念を一蹴した。
「われわれは5年以内に生産能力を倍増させる予定だが、顧客からは『それでは足りない。もっと必要だ』と言われている」とChey氏は述べた。Chey氏は、半導体業界のサイクルについても言及し、自動化する技術の普及がハードウェアの持続的な消費を保証すると付け加えた。「AIエージェント、つまりフィジカルAIロボットには、実際には大量のメモリチップが必要だ」と指摘し、メモリ需要が恒久的に変化したとの確信を示した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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