重要品質事案の代表例として、調査報告書は5件を詳述している。
SPMSに属する会社の工場では、IT機器用プレス製品について顧客と合意した規格を安定して満たせず、規格より緩い社内判定基準を設定。顧客へ提出する出荷検査データも、実測値から規格内に収まる数値へ書き換えていた。
遅くとも2020年3月には会社社長らがデータ改ざんを認識したが、顧客には報告せず、工程改善で対応する方針を採った。さらに同年6月には、品質に懸念が生じないことを前提とし一定条件下で顧客報告用データを実測値から変更することを「データ修正」として認めるSPMSの社内ルールも制定。不適切行為は2018年7月ごろから続き、今回の品質総点検にて発覚後、2026年5月に停止されたという。
AMEC Organicの海外製造拠点では、顧客の承認を得ず、不適合となり本来廃棄する車載用モーターの部品の一部を交換/再加工/再組み立てして生産工程へ戻していた。一部は遅くとも2012年ごろから続いていたという。
NMOJの海外拠点では、自動車向け樹脂部品に、顧客との合意で使用を禁止されていた再生樹脂を15%配合。NTMCでは、必要な含有化学物質情報を確認しないまま、顧客要求に適合している旨を顧客に連絡し、製品を製造/出荷していた。
NISTでは、必要な強度検査を実施せず、規格内の定型的な数値を実測値であるかのように記録し、顧客への検査成績表に使用していた。
調査で証拠上確認された最も古い不適切行為は2012年に始まったものだったが、伊丹氏はこれについて「不適切行為の時期をピックアップして調査することは、調査目的にない」と説明。それ以前にも不適切行為があった可能性は「あったともなかったとも言い難い」と述べた。
調査委員会は、品質不適切行為が複数のBUや拠点で発生し、発見/報告/是正されないまま継続した背景について、経営層、コーポレート層、BU/拠点層の3つに分けて構造的問題を分析している。
報告書では、グループの規模拡大後も、創業者である永守重信氏による「非常に強いリーダーシップとマイクロマネジメントを中心とする経営体制」を続けたと指摘。伊丹氏は、ニデックが「事業の実力あるいは実態に見合わない利益目標」を設定し、短期目標の達成やコスト低減を強く求め続けていたと説明した。
ニデックの2022年度の事業計画策定では、対象BUが回答した営業利益の合計が1920億円だったのに対し、全社ガイドラインとして2600億円を示していた。そして、2023年度には一部を除き、前年の見込み営業利益率に原則6ポイントを加算した目標を設定していた。また、目標は四半期、月次、日次などに細分化され、達成が困難なBUでは業績会議が連日、時には1日複数回開かれ、深夜に及ぶこともあったという。
調査委員会の委員である河合健司氏は「個々の拠点によって違いがあるため一律には言えないが、企業の急拡大に伴って相応の技術/管理体制を構築すべきだったにもかかわらずその整備が遅れ、かつ、トップ層のマイクロマネジメントによって業績達成を強く求めたことも原因になった。その意味では経営層の方針にゆがみがあったともいえる」と言及。一方、経営層だけではなく、コーポレート層やBU/拠点にも問題があり、「構造的な問題が原因の本質ではないかと考えている」とした。
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