電力中央研究所は、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスの特性を予測できるシミュレーション技術を開発した。この技術を活用すれば、耐電圧10kV超級SiC-IGBTの特性予測精度を向上でき、開発期間短縮にもつながる。
電力中央研究所エネルギートランスフォーメーション研究本部の浅田聡志主任研究員、村田晃一上席研究員、土田秀一主席研究員らによる研究グループは2026年9月、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスの特性を予測できるシミュレーション技術を開発したと発表した。この技術を活用すれば、耐電圧10kV超級SiC-IGBTの特性予測精度を向上でき、開発期間短縮にもつながる。
SiC-IGBTは、電気伝導メカニズムが複雑で、通電特性をシミュレーションで再現することが難しかったという。特に、キャリア再結合やキャリア注入を支配する物理パラメーターを、高精度に決める手法がこれまで確立されていなかった。
研究グループは今回、SiC-IGBTの母材となるSiC結晶のキャリア寿命と真性キャリア密度を導き出す手法を考案した。キャリア寿命を導き出すため、まずはSiC結晶に対し時間分解フォトルミネセンス(TRPL)を測定した。続いて、TRPL測定で得られたPL発光強度の減衰カーブを計算で求め、キャリア寿命をフィッティングパラメーターとして実測結果に合わせ込み、SiC結晶のキャリア寿命を導き出した。
減衰カーブの計算では、光照射下における結晶中の直接再結合レートの総和をPL発光強度として扱い、TRPL測定を模擬した。真性キャリア密度に関しては、パラメーターを導き出すためのSiCバイポーラトランジスタを別途作製し、コレクタ電流を解析することで算出した。
研究グループは、試作したSiC-PiNダイオードの通電特性を実測し、その素子構造に対するシミュレーション結果と比べた。この結果、研究で導き出したキャリア寿命と真性キャリア密度の値を用いた場合に両者の結果がほぼ一致。シミュレーションによって300〜523Kの温度範囲で、PiNダイオードの通電特性を高い精度で再現できることが分かった。
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