富士通は、ダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプを開発した。従来一般的な窒素-空孔(NV)センターではなく、発光効率に優れるスズ-空孔(SnV)センターを採用し、光接続による量子モジュールの大規模化を見据えた構成とした。将来的には、超伝導量子コンピュータ同士を接続する技術としての活用も目指す。
富士通は2026年9月8日、ダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプを開発したと発表。同プロトタイプをメディア向けに公開した。
ダイヤモンドスピン方式は、ダイヤモンド結晶中の格子欠陥に生じる電子スピンや核スピンを量子ビットとして利用する方式だ。量子状態を長時間保持できるほか、光を使って量子状態を伝送できるので、複数の量子モジュールを接続して大規模化できる可能性がある。
今回、富士通は従来一般的だった窒素-空孔(NV)センターではなく、スズ-空孔(SnV)センターを採用した。SnVセンターをチップ上に集積した量子コンピュータは「世界で初めて」(富士通)だ。2027年には複数の量子モジュールからなるプロトタイプの開発を目指す。
量子コンピュータの実用化に向けては、超伝導やイオントラップ、中性原子などさまざまな方式が研究されている。ダイヤモンドスピン方式は、ダイヤモンド結晶中の「カラーセンター」と呼ばれる格子欠陥構造に生じるスピンを量子ビットとして利用する方式だ。
スピンは電子や原子核などが持つ量子力学的な性質で、微小な磁石のように振る舞う。外部から磁場を加えると、スピンの向きによって2つのエネルギー準位に分かれる。これらを量子ビットの「0」と「1」として利用する。さらに、共鳴する高周波電磁場を与えることで量子ビットの状態を制御できる。
ダイヤモンドでは、結晶中に特定の不純物と空孔が形成されると、その周囲に電子スピンが生じる。さらに電子スピンと結合した炭素13(13C)の核スピンも量子ビットとして利用できる。富士通が今回開発した量子モジュールも、電子スピン量子ビットと複数の核スピン量子ビットから構成されている。
ダイヤモンドスピン方式の大きな特徴が、量子状態を保持できる「コヒーレンス時間」の長さだ。富士通 富士通研究所フェロー 兼 量子研究所長の佐藤信太郎氏によると、NVセンターでは電子スピンのコヒーレンス時間が1秒以上、13Cの核スピンでは1分以上に及ぶ。量子状態を安定して長時間保持できるので、高い忠実度(フィデリティ)を得やすいことが特徴だ。
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