富士通は今後、SnVセンターの集積技術を発展させ、2027年を目標に複数の量子モジュールからなるダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプを開発する。
さらに同社が見据えるのが、ダイヤモンドスピン技術を量子コンピュータ同士の接続に利用することだ。現在の量子コンピュータは、1台の冷凍機内に搭載できる量子ビット数に物理的な制約がある。量子ビット数をさらに増やすには、1台の冷凍機に収容できる規模が限界に達した段階で、複数の冷凍機を接続する必要が出てくる。
例えば超伝導量子コンピュータでは、量子状態の伝送にマイクロ波を利用する。ただ、マイクロ波のまま別の冷凍機まで伝送しようとすると、接続部分も極低温に保つ必要がある。マイクロ波の量子状態を光に変換できれば、冷凍機間を光配線で接続できる。このマイクロ波−光変換にはトランスデューサーが必要で、佐藤氏によると現在、世界各地で研究が進められているという。
一方、複数の量子コンピュータを連携させて計算するには、それぞれから届く量子情報のタイミングを合わせる必要がある。そこで富士通が量子状態を一時的に保持するメモリとして活用しようとしているのがダイヤモンドスピンだ。
光で届いた量子状態をダイヤモンドの核スピンなどに一時的に保持することで、通信タイミングのずれを吸収する構想だ。説明会では、その用途の一例として、ダイヤモンドスピン技術を介して複数の超伝導量子コンピュータを接続する構想を示した。
佐藤氏は「冷凍機を無限に大きくすることはできないので、ある時点では冷凍機同士をつながなければならない」と説明。ダイヤモンドの核スピンなどに量子状態を一時的に保持できることが、量子コンピュータ間を接続する上で利点になるとの見方を示した。
ダイヤモンド方式だけでなく、イオントラップ方式や中性原子方式など、異なる方式の量子コンピュータを将来的に接続する可能性も検討する。ハードウェアだけでなく、複数の量子コンピュータに計算処理を分散させる「分散量子計算」の研究も進める。
ビジネス面では、量子コンピュータのハードウェアを単独で提供するというより、高性能コンピューティング(HPC)やAIと組み合わせたサービスとして展開することを将来的に想定しているという。
富士通は超伝導方式とダイヤモンドスピン方式の双方の研究開発を継続する方針だ。佐藤氏は「最終的にどの方式が主流になるかはまだ見通せない」として、当面は複数方式の研究開発を並行して進める考えを示した。
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