NTTは、サブテラヘルツ帯を用い、100mの距離で2Tビット/秒の無線伝送に成功した。NTTによると「電波を用いた無線通信として世界最高速」だという。軌道角運動量(OAM)を利用した独自の「OAM-MIMO多重伝送方式」を採用し、空間多重処理の大半をアナログ回路で担うことで、デジタル信号処理の演算負荷を抑えた。6Gの基地局ネットワークやAIデータセンターなどへの応用を見込む。
NTTは2026年9月14日、サブテラヘルツ帯で2Tビット/秒の大容量無線伝送を、100mの距離で実証したと発表した。実験では136.0G〜148.5GHzと151.5G〜164.0GHzを使用し、最大22の空間多重を行った。100mという実用的な距離でのサブテラヘルツ帯無線通信として「世界最高速」(NTT)だという。
想定するのはスマートフォンなどの端末に直接通信するアクセス用途ではなく、基地局設備を結ぶバックホール/フロントホールや、ビル間通信、AIデータセンター内の通信などだ。このほか、大規模イベントや災害時に一時的に大容量回線を構築する用途も想定する。光ファイバーのような配線工事を必要とせず、短期間で設置/移設できる無線の柔軟性を生かす。
NTTの担当者はサブテラヘルツ帯について「レーザーのように直進性が強く、建物の裏側などへの回り込みには向かない」としながら、見通しの取れる2点間を結ぶ用途では「無線で非常に大きな容量を伝送できる」と説明。データセンターについても、多数の光ファイバー配線を無線に置き換え、接続先を柔軟に切り替える用途を検討しているという。
今回の実証の中核となるのが、NTTが開発を進めてきた「OAM-MIMO多重伝送方式」だ。
軌道角運動量(OAM:Orbital Angular Momentum)を持つ電波は、位相が進行方向に対してらせん状に回転する。異なるOAMモードを用いることで、同じ周波数/同じ時刻に同一方向へ複数の信号を送る空間多重が可能になる。NTTは2023年にも、サブテラヘルツ帯で1.4Tビット/秒、伝送距離1mの無線伝送を実証していた。今回は速度を2Tビット/秒に高めるとともに、伝送距離を100mまで伸ばした。
大規模な空間多重では通常、複数の信号間で生じる干渉を取り除くために、大量のデジタル信号処理が必要になる。特にサブテラヘルツ帯のような超広帯域信号でアンテナ数を増やすと、演算負荷や消費電力、処理遅延が問題になる。
そこでNTTは、信号処理をデジタルとアナログに分担させるハイブリッド構成を採用した。OAMモードの生成/分離はアナログ導波回路で処理し、デジタル処理は各OAMモード内で必要となるMIMO処理に限定する。8素子×2リングのアンテナ構成では、8つのOAMモードをアナログで多重/分離し、デジタル演算の対象を各モード内の2素子相当に絞る。これにより、フルデジタル方式に比べデジタル演算負荷を数百分の1まで低減できるという。
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