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サブテラヘルツ帯で「世界最速」2Tビット/秒、100m伝送を実証6G/AIデータセンター向け(2/2 ページ)

» 2026年09月14日 15時30分 公開
[浅井涼EE Times Japan]
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100m伝送を実現した3つの技術

 100mへの長距離化に向けてNTTが新たに確立したのが、「Multi-UCA型Butler matrix導波回路技術」「イメージングリフレクタ技術」「軸ずれ補正技術」の3つだ。

技術のポイント 技術のポイント[クリックで拡大] 出所:NTT

 1つ目のMulti-UCA型Butler matrix導波回路は、OAMモードの多重/分離をアナログで行う中核回路だ。円形アレーアンテナ(UCA)を複数リング化しながら、導波回路の立体配線などを最適化した。2023年の実験に用いた回路と比較すると、回路規模を2倍にしつつサイズを約40%縮小。回路損失は平均2.2dBで、OAMモード間のアイソレーションも平均20dB以上を確保した。

 2つ目は、伝送距離を伸ばすためのイメージングリフレクタ技術だ。OAM通信ではアンテナの開口径を大きくするほどビームを絞り、高利得化して伝送距離を延ばせる。一方、回路一体型アンテナそのものを大型化すると導波路が長くなり、損失や位相誤差が増える。

 NTTは小型アンテナを1次放射源として使い、複数の反射鏡によってアンテナの「拡大像」を形成する方式を開発した。反射した電波が放射源自身に遮られる「自己遮蔽」を避けながらOAM波の特性を維持するよう反射鏡を設計したことで、小型の回路部分を変えず、反射鏡の設計によって伝送距離を調整できるという。

 3つ目が軸ずれ補正技術だ。OAM-MIMOでは送受信アンテナの軸がずれるとOAMモード間に干渉が発生し、通信品質が低下する。長距離になるほど高精度な軸合わせが必要になるので、NTTは信号対干渉雑音電力比(SINR)を利用し、送受信側のアンテナを協調して回転させながら最適な方向を探索するアルゴリズムを開発した。

 これらを組み合わせ、実験では2つの周波数帯を合わせて2.04Tビット/秒を達成した。単一偏波では11空間多重、水平/垂直の2偏波を合わせて22空間多重とした。

2030年代の6Gを視野、10Tビット/秒級も

 今回の成果はそのまま商用システムとして利用できる段階ではない。実験系はオフライン処理を用いた構成で、今後は実環境での長期運用や既存無線システムへの組み込みなど、システム化に向けた開発が必要になる。

 NTTは、実用化時期について「2030年代の6Gをターゲットに研究開発してきた」とする。一方、具体的な実用化時期については、システム化の進展にも左右されるとして明言していない。

 アンテナの大きさも課題の1つになる。今回の装置では約60cm径のアンテナを使用した。OAMを利用して高い空間多重度を得るには一定の開口径が必要だが、周波数を高めて波長を短くすれば小型化できる。NTTは、例えば150GHz帯から300GHz帯に移行すれば、原理的にはアンテナを半分程度に小型化できるとしている。ただし、より高い周波数の活用にはデバイス技術の進展も必要になる。

 今後は現在の1対1通信から多地点同時接続へと方式を拡張するとともに、10Tビット/秒級の大容量無線伝送技術を目指して研究開発を進める考えだ。

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