東芝は、わずかな音の見本データや認識誤りの訂正記録を活用することで、現場ごとに異なる設備音や発話を高精度に認識できる2つのAI技術を開発した。大量のデータ収集や追加学習、辞書更新の負担を抑え、フィジカルAIを支える音/音声認識への活用を目指す。
東芝は2026年10月、わずかな音の見本データや認識誤りの訂正記録を活用することで、現場ごとに異なる設備音や発話を高精度に認識できる2つのAI技術を開発したと発表した。大量のデータ収集や追加学習、辞書更新の負担を抑え、フィジカルAIを支える音/音声認識への活用を目指す。
製造業や社会インフラの現場では、設備の監視や保守を行う人材の不足、作業者が保有する知識やノウハウの継承などが課題となっている。そこで注目されているのがフィジカルAIの活用だ。ただ、これらを実現するには、現場で発生する設備音や警報音、作業者の発話などを正確に理解する必要があるという。
しかし、設備音などは現場ごとに異なる。しかも異常音の発生頻度は低く、使用頻度が低い設備名や新製品名といった現場固有の言葉もある。従来は、検出対象や現場が変わるたびに音データを収集してAIモデルを追加学習したり、新しい言葉が増えるたびに辞書を更新したりする必要があった。
そこで東芝は、追加学習や辞書更新の負担を抑えながら、少量のデータで現場ごとの音や発話に対応できる2つのAI技術を開発した。その1つが「Few-shot音響イベント検出技術」である。現場ごとに行う大量のデータ収集や追加学習が不要となり、作業現場や用途に応じて検出対象を変更できる。対象の音をリアルタイムに検出することも可能である。
具体的には、検出したい音の見本を数個登録しておけば、長い時間収録したデータから、同種音が発生した区間を検出し、その開始時刻や終了時刻を出力できる。「DCASE 2024 Task 5」の検証用データを用いて評価したところ、追加学習がなくてもF値62.35%を達成したという。なお、この評価には生物の鳴き声を対象とした公開データを用いていて、設備音での実証結果ではない。
もう1つは、「誤り訂正記録活用型音声認識技術」である。音声認識モデルによる「誤った書き起こし」と、利用者が音声認識の誤りを訂正した「正しい表現」の組み合わせを訂正記録として蓄積しておく。新たに音声を認識する場合、これを大規模言語モデル(LLM)へ入力し、認識誤り補正に活用するという。
この時、元の音声から発話された可能性のあるキーワードを最初に検出する。その上で検出したキーワードに関連する記録だけを抽出してLLMに入力する。こうすることで、LLMに入力するデータ量を抑えながら、処理負荷の低減と補正精度の向上を可能にする書き起こし補正を実現した。
英語と日本語の音声データを用い、開発した技術を評価した。直近の訂正記録を利用する比較方式に比べ、LLMへ入力する文の文字数を英語で70.9%、日本語で71.7%削減。専門用語や固有名詞などのキーワード認識のF値は、英語で83.6%から85.6%、日本語で64.8%から67.3%に向上した。
同社は今後、開発した技術を製造やエネルギー、社会インフラ、物流、建設などの分野における設備監視や保守業務、作業記録の作成支援など、幅広い用途への適用を検討していく。
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