東芝デバイス&ストレージ(以下、東芝D&S)は、トレンチゲート型炭化ケイ素(SiC)MOSFETにおいて、長期間使用によるゲートしきい値電圧の変動を抑える技術を開発したと発表した。市販のトレンチゲート型SiC MOSFETと比べてゲートしきい値電圧変動を約50%低減し、高効率化と長期信頼性の両立に寄与するとしている。
東芝デバイス&ストレージ(以下、東芝D&S)は2026年9月30日、トレンチゲート型炭化ケイ素(SiC)MOSFETにおいて、長期間使用によるゲートしきい値電圧(Vth)の変動を抑える技術を開発したと発表した。
SiCの国際学会「The 23rd International Conference on Silicon Carbide and Related Materials (ICSCRM)」(20262026年9月27日〜10月2日、横浜市)で発表したもので、市販のトレンチゲート型SiC MOSFETと比べてVth変動を約50%低減し、高効率化と長期信頼性の両立に寄与するとしている。
SiC MOSFETでは、長時間の電圧ストレス印加によるVthの変動が課題とされる。従来はゲート電極に一定の正電圧/負電圧が連続して印加されることで生じるVth変動が主な課題とされていたが、近年、ゲート電極に正電圧/負電圧が繰り返し印加される(正負ストレス)ことで、印加サイクル数に応じてVthが変動する現象が報告されている。特に一部のトレンチゲート型SiC MOSFETではVth変動が顕著に表れることがあり、解決が求められていた。
ゲート酸化膜の界面処理条件によるVth変動値の比較(測定条件:25℃、ゲート・ソース間電圧=+25V/−10V、Duty=50%、500kHz、サイクル数1011時点)[クリックで拡大]出所:東芝D&S東芝D&Sは今回、トレンチ部のゲート酸化膜を形成する際の界面処理に着目。これまで正負ストレス環境下でのVth変動への影響は十分に検討されていなかったが、界面処理における窒化条件などで、正負ストレス印加後のVth変動量が大きく変化することを確認したという。また、界面処理によって生成される電荷トラップがVth変動に関与していることを示唆する結果も得た。
これらの知見から、ゲート酸化膜の界面処理条件などを最適化することで、低オン抵抗を維持しつつ正負ストレスによるVth変動を抑制できるゲート形成プロセスを確立した。市販品と比べてVth変動を約50%低減し、高効率化と長期信頼性を両立できることから、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、データセンター電源など、電力変換用途での信頼性向上と省エネルギー化に貢献するとしている。
東芝D&Sは2026年5月に、同技術を採用した1200Vトレンチゲート型SiC MOSFET「TW007D120E」を発表し、サンプル出荷も開始している。今後はSiC MOSFETへの適用を拡大し、産業機器向けSiCパワーデバイスのさらなる高信頼化、高効率化を推進するという。
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