メディア

アーム社、ARMv7アーキテクチャのマルチコア「Cortex-A9」を発表プロセッサ/マイコン ARMマイコン

» 2007年10月15日 18時35分 公開
[Peter Clarke,EE Times]

 アームは2007年10月15日、都内で記者発表会を開き、ARMv7アーキテクチャに基づく新しいアプリケーション・プロセッサ・コア「Cortex-A9」を発表した。英ARM社が2007年10月4日に、米カリフォルニア州サンタクララで開催された「ARM Developers' Conference」で発表した内容を受けてのものである。マルチコア版である「Cortex-A9 MPCore」も発表した。同社でCEO(最高経営責任者)を務めるWarren East氏は、2006年初頭からCortexファミリへのマルチコア版の追加を示唆してきており、2007年5月にはARMv7アーキテクチャをマルチコア化すると発表していた。

 Cortex-A9の処理性能は、既存のCortex-A8とほぼ同等である。Cortex-A9 MPCoreは2〜4個のコアを内蔵する。命令およびデータに向けた1次キャッシュを各コアに用意し、キャッシュのコヒーレンシ(一貫性)を保つスヌープ・コントロール・ユニット(SCU)を装備する。対称型マルチプロセッシング(SMP)構成と非対称型マルチプロセッシング(AMP)構成、SMPとAMPの混在構成に対応する。SMP構成時の処理性能は、8000DMIPS以上に達する。最先端のプロセス技術で製造すれば、1GHz以上のクロック周波数で動作する。さらに、動作周波数を低くしたり、コアへの電源供給を遮断することで、消費電力を低減する機能を備える。高品位(HD)テレビ向けセットトップ・ボックスや家庭向けサーバー、スマートホンなどに向ける。

図 ARM社でマルチプロセッシング・プログラム・マネジャーを務めるJohn Goodacre氏

 ARM社でマルチプロセッシング・プログラム・マネジャーを務めるJohn Goodacre氏は、「Cortex-A9コアは、1個のコアで最大2000MIPSの処理性能が得られる。同じ2000MIPSの処理性能を2個のコアを使って実現すれば、消費電力を削減することが可能になる。3個のコアを使えば、消費電力をさらに低くすることができる。機器に求められる要件に合わせて柔軟に対応できる」としている。

 Cortex-A9のアーキテクチャでは、1つのチップに5個以上のコアを集積することが可能だ。その際には、ARM社が「クラスタ」と呼ぶ、コアの集合体を複数個集積する。クラスタは2〜4個のコアで構成するもので、チップにこのクラスタを複数個搭載することで、5コア以上のマルチコアを実現できる。ただし、SMP構成を採れるのはクラスタ内のコアだけである。複数のクラスタの間では、AMP構成となる。

 Cortex-A9コアは、Cortex-A8コアの改良版である。Goodacre氏は、「マルチプロセッシングに対応するための命令を数点追加したが、Cortex-A8コアの上位互換性を備える」としている。Cortex-A9コアはCortex-A8コアと同様に、8段のパイプラインを備えるスーパースカラ構造を採る。最大4つの命令の同時実行が可能である。

 Cortex-A8コアのパイプラインがイン・オーダー(順次処理)なのに対して、Cortex-A9コアはアウト・オブ・オーダー(非順次処理)のパイプラインを備える。一般にアウト・オブ・オーダーのパイプラインは、イン・オーダーに比べて処理性能が15〜20%高い。さらに、分岐予測機能や投機実行機能を備える。

 特定用途の処理に向けたアクセラレータ回路を接続するための「アクセラレータ・コヒーレンス・ポート(ACP)」を備える。アクセラレータ回路は、ACPを通してCortex-A9コアのキャッシュにアクセス可能である。アクセラレータ回路を集積することで、さらなる処理性能向上と、消費電力の低減が可能になる。

 さらに、機器のセキュリティ強化を目的とした、Para-virtualization(準仮想化)に対応する仮想化機能である「TrustZone」テクノロジやThumb2命令、浮動小数点演算ユニット(FPU)、メディア・データの処理に向けたSIMD(Single Instruction Multiple Data)命令セット「Neon」などを搭載した。

 Cortex-A9は従来とは異なり、当初から論理合成可能な(シンセサイザブル)コアとして提供される。Goodacre氏は、「FPUやNeonの追加、キャッシュ容量、割り込みスキーム、周辺機器とのインターフェースなどがカスタマイズ可能である」と述べている。

 Cortex-A9の最終版が半導体メーカーにライセンス供与されるのは、2008年初頭の予定である。ARM社は、NECエレクトロニクスや米Nvidia社、韓国Samsung Electronics社、伊仏合弁のSTMicroelectronics社、米Texas Instruments社などの先行開発メーカーに対してCortex-A9のベータ版をすでにライセンス供与している。

 ライセンス供与先の半導体メーカーがチップの製造を始めるのは、12〜18カ月先になる。Goodacre氏は、「(Cortex-A9を搭載した)最初の機器の販売開始は2009年末になるだろう。2010年には、数多くの機器が市場に投入される」という。さらに、現在は65nmプロセスで製造されたチップに関する性能が示されているが、今後、45nmプロセス技術を適用したチップの性能も示されるだろう。

 Goodacre氏は、OSの対応について、既存のマルチコア・プロセッサ「ARM11 MPcore」で動作する例として、米Mentor Graphics社の「Nucleus」や、Linux、米QNX Software Systems社の「QNX Neutrino」、米MontaVista Software社の「Mobilinux」、「T-Kernel仕様」に準拠したイーソルの「eT-Kernel Multi-Core Edition」などを引き合いに出した。Goodacre氏は、「英Symbian社のSymbian OSは、ARM11のマルチコアには正式に対応していないが、研究所では動作している」と述べた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.