ルネサス エレクトロニクスは、650V耐圧の窒化ガリウム(GaN)パワー半導体の新製品を発表した。2024年6月にTransphormを買収して以来初めての新製品だ。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2025年7月1日、650V耐圧の窒化ガリウム(GaN)パワー半導体の新製品を発表した。2024年6月に米国Transphorm買収によってGaNパワー半導体市場に参入して以来、初めて発表する新製品だ。
新製品は、新たなプロセス「第4世代プラス(Gen IV Plus)」を採用した。従来の「第4世代(Gen IV)」と比較してダイサイズを縮小し、オン抵抗を30mΩまで低減して、電力効率を高めている。AIサーバやEV充電システムなど、1k〜10kWクラスの電源システムに適する。
ルネサス パワープロダクトグループ GaN事業部の細田勉氏は「ルネサスのパワーディスクリート事業はGaNパワーデバイスとシリコン(Si)のMOSFETに注力している。市場をけん引するAI用途で競争力が見込めるからだ。GaNパワーデバイス市場は長期的に年平均成長率2桁の高成長が予想されている」と説明する。今後は電力密度がSiや炭化ケイ素(SiC)を凌ぐほか、ウエハーサイズの拡大で価格的にも競争力を持つと見込まれる。
ルネサスはGaNパワーデバイスとして、主に650Vと高耐圧の製品を展開している。今後は40〜200V耐圧品もリリースする予定だ。ディスクリートの販売のほか、GaNに最適化したコントローラーやドライバー、SiP(System in Package)やパワーステージ、リファレンスデザインといったシステムソリューションの提案も強化している。
さらに、6インチウエハーから8インチウエハーへの移行も準備していて、米国のパートナーとの供給契約などを進めている。
ルネサスのGaNパワーデバイスの特徴は、カスコード構造によって堅牢性を高め、EV充電器やAIサーバといったハイパワー用途を得意としていることだ。温度上昇による抵抗の上昇率も小さく、動的オン抵抗も小さいので効率が高い。
旧Transphormの技術である「SuperGaN」は高耐圧のDモードGaNと低耐圧のSi MOSFETを直列に接続したカスコード構造を活用。この構造によってEモードで必要とされる専用ドライバーを使う必要がなく、Si MOSFETを駆動するための標準的なドライバーで容易に駆動ができる。また、しきい値電圧が4VとEモードより高いため誤動作のリスクが低く、高い信頼性を備える。
SuperGaNでは低損失なDモードGaNの技術に基づいて、ゲート電荷、出力容量、スイッチング損失、動的抵抗による影響を抑え電力損失を最小限にしている。この技術によってSiやSiCよりさらに低損失/高効率なスイッチング性能を実現できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.