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Trigenceがデジタル駆動スピーカ発表、新たな信号処理回路開発で実現オーディオ処理技術 スピーカー(1/2 ページ)

法政大学発のベンチャー企業であるTrigence Semiconductor(トライジェンス セミコンダクター)は、デジタル信号を入力することでスピーカを駆動する「デジタル駆動型スピーカ」を発表した。

» 2008年07月15日 00時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 法政大学発のベンチャー企業であるTrigence Semiconductor(トライジェンス セミコンダクター)は、デジタル信号を入力することでスピーカを駆動する「デジタル駆動型スピーカ」を発表した。スピーカそのものは、電気信号を機械的な振動に変えるというごく一般的なものである。しかし、複数のスピーカを同時に使うことに加えて、それぞれのスピーカの駆動方法が従来とは大きく異なる。複数のスピーカを使わずに、ダイナミック・スピーカに複数の電磁コイルを作り込むことでデジタル駆動型スピーカを実現することも可能である。

 今回、「Dnote」と呼ぶ独自のデジタル信号処理技術を開発することで実現した。オーディオ処理DSPからスピーカまでの信号処理の流れを大きく変える可能性を秘める。

図 図(a)は、薄型テレビなどで採用されているオーディオ処理のシグナル・チェーン。デジタル駆動型スピーカを採用すれば図(b)のようにシグナル・チェーンが変わる可能性がある。 

 具体的な駆動方法は、各スピーカに印加する電圧をすべて同じにしておき、各スピーカに電圧を印加するかどうかのみを制御するというものである。音量(音圧)は、同時に駆動するスピーカの数によって調整する。2つのスピーカを駆動したときは、1つのスピーカを駆動したときに比べて基本的には、音量が2倍に高まるという考え方である。オーディオ信号の振幅の時間変化に合わせて、駆動させるスピーカの数が次々と変わることになる。周波数特性は、使用するスピーカの特性に依存する。

 同社の代表取締役を務める安田彰氏は、「デジタル駆動型スピーカには、これまでのスピーカにはない、数多くの利点がある」と主張する。大きく分けて3つの点を挙げた。1つは、低電圧駆動できることである。例えば、従来は12Vで駆動していたスピーカと同等の音量を、1.5Vの駆動電圧で実現できると主張する。「3.3Vの駆動電圧があれば、薄型テレビ向けとして、十分の音量が得られる」(同氏)。

図 デジタル駆動型スピーカを開発したTrigence Semiconductorの代表取締役である安田彰氏(左)と、同社取締役の岡村淳一氏(右)。 

 3.3Vで駆動時の消費電流は、ステレオで120mA程度(6つの電磁コイルを組み込んだダイナミック・スピーカの場合)である。低電圧駆動ができれば、ほかのデジタル・チップと電源系統を共通化できる。結果、昇圧型DC-DCコンバータICを別途用意する必要がなくなるというメリットもある。

 2つ目は、各スピーカが出力する音声の位相をうまく制御することで、高い指向性を比較的容易に実現できることである。「特定の人だけに音楽を聞かせたり、臨場感のあるオーディオを実現したりと、さまざまな用途に使えそうだ」(同氏)。3つ目は、複数のスピーカを比較的自由なレイアウトで配置してステレオ感が得られることである。

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