マルチコアプロセッサを開発販売する米Tilera社は、200個のコアを統合したプロセッサを2013年に発売する予定を明らかにした。また、同社のパートナー企業である台湾Quanta Computer社が、Tilera社の64コアプロセッサを使って、合計で512ものコアを搭載したサーバ「S2Q」を開発したことも発表し、そのデモを披露した。大型コンピュータメーカーである米SGI社でチーフエグゼクティブを務めるMark J. Barrenechea氏は、Tilera社のプロセッサを用いたシステムの実用化を考えているという。
S2Qサーバは、8個のTilera TilePro64プロセッサを内蔵し、2Uのシャーシに格納されている4つのモジュールに、最大16ポートのギガビットイーサネットのインターフェイスと16ポートの10ギガビットイーサネットのインターフェイスを搭載する。Tilera社は、12台のS2Qサーバが実現する性能は、米Intel社のプロセッサ「Xeon」を搭載するデュアルプロセッササーバ100台分に相当すると主張する。さらに消費電力量は、S2Qサーバが5kWであるのに対し、Xeonサーバは25kWだという。
新興企業である米SeaMicro社は2010年6月、Intel社のプロセッサ「Atom」を512個搭載した低消費電力サーバを発表している。また、米Marvell Technology Group社をはじめさまざまな企業が、ARMプロセッサを搭載した低消費電力サーバの開発に取り組んでいる。
S2Qは、最大64個のDIMMスロットと、最大24個のSAS、シリアルATA対応端子を搭載し、対称型マルチプロセッシング対応Linuxを採用している。2010年末までに一般向けに発売を開始する予定だ。
S2Qは、クラウドコンピューティングにおけるサーバに掛かる負荷の軽減を目指し、データセンタープロバイダと共同で開発された。
Quanta Computer社でクラウドコンピューティングビジネスユニット担当バイスプレジデントを務めるMike Yang氏は、「S2Qの開発に成功したことは、スペースや電力に制約があっても高性能を実現できる、飛躍的な技術進歩だ」と述べている。Quanta Computer社は、台湾の大手ODM(Original Design Manufacturer)ベンダーであり、Tilera社にも出資している。また、Tilera社でチーフエグゼクティブを務めるOmid Tahernia氏は、「現在は、x86プロセッサでは実現し得なかった高い電力効率や高いサーバ密度が求められている」とコメントしている。
またTilera社は、200コアプロセッサ「Stratton(開発コード名)」の開発に取り組んでいることも明らかにした。28nm製造技術を適用するという。同社は以前に、同社の「Gx」製品ファミリとして、100コアプロセッサを開発する計画も発表している。40nm製造技術を適用し、2011年の出荷を目指す。
SGI社のBarrenechea氏は、「Tilera社と協業することで、環境シミュレーションや航空宇宙など大規模な科学技術計算能力が要求されるHPC(High Performance Computing)やクラウドコンピューティング、政府関連などといった市場の顧客に向けて、この技術を展開していきたい」と述べている。
さらに同氏は、「ごく普通の環境において、処理性能や電力効率を高めることにより、クラウドコンピューティングを次なる段階へと発展させ、革新的な進歩を実現できる」と付け加えた。
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