熱電素子の変換効率は、最先端の品種でも現在のところわずか5%程度に過ぎない。しかし最新の研究では、「スクッテルド鉱(スクッテルダイト)」という物質を利用し、その原子の配列を調整する新技術を適用することにより、熱電素子の電力効率を約20%まで高められることが明らかになった。実用化も十分に見込めるという。
例えば、このような高効率の熱電素子を利用した熱電変換器をハイブリッド自動車(HEV)の排気管に取り付けて、排気熱を電気に変換すれば、HEVの2次電池を充電することも十分に可能だ。
スクッテルド鉱は、コバルトとヒ素の化合物の1種であり、高い導電性を備えているにも関わらず、熱伝導性が低い。米国のUniversity of MichiganのCtirad Uher教授は最近、この化合物中にある特定のバリウム合金の構造を利用することによって、この物質の変換効率を飛躍的に高められることを発見した。この技術を利用すると、スクッテルド鉱の熱伝導性を効率よく低減でき、その結果、変換効率を大幅に向上させることが可能だという。Uher教授は、同僚のMassoud Kaviany教授と共同でこの研究に取り組んだ。
両教授の主張によれば、自動車メーカーがこの新しい材料を採用すれば、自動車の排気管から排気熱のエネルギーを回収して電気を作り出すことが可能だという(図1)。Uher教授は、自動車の排気について、「追加コスト無く利用できる、大きな熱源だ」と表現している。
今回の研究は、米エネルギー省の基礎エネルギー科学部門(Office of Basic Energy Sciences)と、University of MichiganのCenter for Solar and Thermal Energy Conversionから資金提供を受けている。
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