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人生の棚卸しと「恥辱プレイ」でつかんだ合格証明書リタイア直前エンジニアの社会人大学漂流記(3-1)(1/4 ページ)

今回は大学院(博士課程)に入学するまでの「ドタバタ劇」をお伝えしたいと思います。願書提出から受験までの過程は、人生やキャリアの棚卸しと、残酷なまでの自己点検の連続となりました。

» 2026年02月26日 10時00分 公開
[江端智一EE Times Japan]
リタイア直前エンジニアの社会人大学漂流記

3年間の休載を経て戻ってきました。休載していた理由は、私はリタイア(定年退職)間際だったにもかかわらず、「MAS(マルチエージェントシミュレーション)」を研究すべく、社会人のまま大学院博士課程に突っ込んでいったからです。なぜ“そんなこと”になったのか――。そして私をそこまでさせた「MAS」とは何なのか。社会人大学院生の実態を赤裸々に語りつつ、MASを技術的に深掘りしていきます。
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アイドルの激励ソングよりも圧倒的に正しい、「保護者の言葉」

 さて、前回「定年間際のエンジニアが博士課程進学を選んだ「本当の理由」」は、私が企業研究員としてのキャリア上の戦略ミス

―― やりたい仕事(研究)をするためには、やりたくない仕事を山ほどしなければならない

という現実を見落としていた(目を背けていた)ことについて、お話をしました。そして、もう一つの現実

―― もう、それを修正し、やり直す機会はない

にも、直面しています。残酷なようですが、時間は有限で、その機会を逃した者に与えられるチャンスは少ないのです(特に定年退職を迎えた人間には、もうキャリアを構築する地盤すらないのです)。

 「チャンスは何度でもある」とか「いつだって、やりなおせる」などと大きな声で歌い上げるアイドルの言葉を信じてはいけません。あなたの定期考査は内申書(通知表)に影響し、勉強時間は入試の合格率に反映し、あなたの学歴は人生の自由度や進路選択に、大きな影響を与えます。残念なことですが、アイドルの歌より、多分あなたの保護者の言葉の方が「“かなり”正しい」(“絶対”に正しいとは言いませんが)。

 ただ、これは、私のようにリタイア直前に気が付くこともあります ―― そして、お互いに自分の生き方を後悔しながら、病気になり、衰え、死んでいきましょう ―― 安心してください、あなたのそばには、いつもこの私(江端)がいます

 さすがにこの冒頭は、編集担当の村尾さんに削除されるかもしれませんが、私がこのコラムで伝えられることがあるとすれば、「私(たち)は、結局のところ、一つの人生しか生きることができず、それを考えうる全ての観点から評価して100点満点の人生を生きることはできない」ということです。

 これを、簡潔なフレーズとして纏めるのであれば諦めろということです。

「学歴とコネ」がモノを言う博士課程入学の世界

 さて、今回は横浜国立大学の大学院(博士課程)に入学するまでの、「ドタバタ」についてご報告したいと思います(私が調べた限り、この手の情報は少ない ―― というか“ない”ようです)。

 第1に必要なのは「学歴」です。ちゃんと調査をしたわけではないのですが、博士課程に入学するためには、一定の資格(実績)が必要なことが多いです。修士課程(いわゆる、博士課程前期)修了の資格がポピュラーですが、博士課程に入学するに足る実績(社会人としてのキャリア(年月))とか、あるいは学会や特許発明での受賞などでも代替できるかもしれません。

 全体に言えることですが、これは、大学の募集要項を読んでも分からないことが多いため、大学の事務局に直接電話することをお勧めします。メールとかで問い合わせをするのが面倒だからです。そうすると、ほぼ間違いなく、大学の事務局は、入学を希望する研究室(の教授)に「たらい回し」します ―― この「たらい回し」のなかで、ドタバタするプロセスが、これがなかなかに侮れないのです。

 第2に必要なのは、「コネ」です ―― いきなり、嫌な話をしますが、「コネ」でなければ、「きっかけ」とか「偶然」とか、「タイミング」とかと言い換えても構いません。私の場合、会社で共同研究をしていた、有吉先生とのコネ(冷たい雨に打たれながらの、一緒に行ったフィールド実証実験)がありましたが、上記の「たらい回し」の中でコネができることもあるかもしれません。といいながら、修士課程の証明書が、一番面倒がない、というのは事実です。

 以下は、願書を出す時に、私が作成して提出した資料の一覧です。今見てもゲッソリしそうなほど、大量の書類を作成しました。

No. 書類名 備考・指示
1 出願書類送付用ラベル 24cm × 33.2cm 封筒に貼付し、書留で郵送
2 出願書類チェックリスト 本チェックリスト
3 入学検定料 ※一部免除対象あり(下記注)
4 入学願書 所定様式
5 受験票 所定様式
6 返信用封筒ラベル 所定様式
7 返信用封筒 12cm × 23.5cm、354円切手貼付
8 最終学歴の修了(見込)証明書 卒業(修了)証明書
9 最終学歴の成績証明書 成績証明書
10 修士論文および要旨 修士課程修了者
11 研究業績調書 研究実績一覧
12 研究計画書 博士課程での研究計画
13 勤務先の所属長の受験許可 勤務先承認
14 出願資格認定書(写) 認定申請済の写し

 例えば「8.最終学歴の修了(見込)証明書」ですが、30年も前に卒業した証明書を出してもらえるのか心配しましたが、身分証明書のコピーを添付し、卒業した大学のホームページからWeb申請するだけで、郵送してもらえました(そういえば、卒業証書を開示せず不信任を喰った市長がいましたね)。念のために2通お願いしました。ちなみに「9.最終学歴の成績証明書」を見て、当時の成績を思い出してイヤな気分になりました。

 業務履歴(「11.研究業績調書」)の提出も必要でした。入社から現在まで、私はいろいろなことをやってきて、自分でも、何をやってきたのか思い出せないありさまでしたので ―― 会社に提出した研究報告書の一覧を社内Webサイトで調べて、そこから経歴を作成しました。

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