DSPコアを手掛けるIPベンダーのシーバ(Ceva)が、携帯電話機のサプライチェーンの中で存在感を高めている。例えば、かつてはテキサス・インスツルメンツやクアルコムが携帯電話機メーカーに独占的に供給していたベースバンド処理LSIである。現在では、同社のDSPコアを集積するベースバンド処理LSIを半導体ベンダー各社が製品化し、それらを携帯電話機メーカーが積極的に採用するという構図に変わっている。
「携帯電話機のサプライチェーンに地殻変動が起きている。テキサス・インスツルメンツやクアルコムは、独占的なサプライヤーというかつての地位を失いつつある」(シーバCEOのGideon Wertheizer氏)。
DSPコアを手掛けるIPベンダーのシーバ(Ceva)が、携帯電話機のサプライチェーンの中で存在感を高めている。例えば、かつてはテキサス・インスツルメンツやクアルコムが携帯電話機メーカーに独占的に供給していたベースバンド処理LSIである。現在では、同社のDSPコアを集積するベースバンド処理LSIを半導体ベンダー各社が製品化し、それらを携帯電話機メーカーが積極的に採用するという構図に変わっている(図1)。
シーバのWertheizer氏によれば、かつてサムスン電子は、携帯電話機用のベースバンド処理LSIをクアルコム1社から調達していた(図2)。ところが現在では、ブロードコムとインフィニオンテクノロジーズ*1)、ST-エリクソンの3社から調達するという方針に切り替えていると言う。またノキアも、以前はベースバンド処理LSIをテキサス・インスツルメンツ1社から購入していたが、現在ではサムスン電子と同じ3社にVIA Telecomを加えた合計4社から調達するようになっているとWertheizer氏は述べる。これら新規サプライヤーはいずれも、それぞれのベースバンドLSIにシーバのDSPコアを採用していると言う。
こうした状況の中、シーバは2011年1月末に、同社のDSPコアを搭載した携帯電話機向けベースバンド処理LSIの出荷個数がクアルコムとテキサス・インスツルメンツ、MediaTekを抜いたと発表した。市場調査会社のStrategy Analyticsのリポートによれば、2010年第3四半期に出荷された携帯電話機向けベースバンド処理LSIの数量(2010年12月における暫定値)は4億9800万個だったと言う。これに対しシーバは、同社のDSPコアを集積した携帯電話機向けベースバンドLSIの出荷数量が同じ四半期に1億7800万個に達していると話す。従って、「市場シェアは36%に上る。同分野向けのDSPアーキテクチャとしては、当社のDSPコアが市場で最も高いシェアを獲得している」(同社)と主張する。なおStrategy Analyticsのこのリポートでは、同四半期にクアルコムが1億780万個、テキサス・インスツルメンツが9970万個、MediaTekが8860万個のベースバンド処理LSIを出荷したとしている。
さらにシーバは、携帯電話機メーカーとの直接的な関わりも強めており、2011年2月には日本の携帯電話機メーカーであるNECカシオモバイルコミュニケーションズとの間で、次世代のワイヤレスベースバンド規格に対応する携帯電話機用モデム技術を共同で研究する契約を締結したと発表した。両社は共同で、次世代モデムで求められる処理性能や目標性能、システムアーキテクチャを検討すると言う。
シーバが手掛けるのは通信用DSPコアだけではない。音声や動画像の処理に向けたDSPコアでも市場に攻勢をかけている。2011年1月には、「CEVA-TeakLite-III DSPアーキテクチャ」に基づくオーディオ処理用32ビットDSPコアの新製品「CEVA-TL3211」を発表した(図3)。「デジタルテレビやBlu-ray Disc機器などで求められる高品位(HD)オーディオ機能や、セットトップボックスや高性能スマートフォンなどで需要が拡大する高度なオーディオ機能のニーズに対応できる」(シーバ)と言う。
40nm世代のプロセス技術で実装した場合、1GHzのクロック周波数で動作し、回路面積は0.2mm2である。デジタルオーディオ技術の開発企業であるDolby LaboratoriesとDTSそれぞれが認証済みのHDオーディオコーデックもサポートする。具体的には、「Dolby MS10」「同MS11」の他、すべてのDTS-HDオーディオコーデックに対応した。
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